2017.2.20
6人の「レベル3」① 競技委員も"世界基準"へ
LPGA会長・小林浩美が、就任時から繰り返し提唱してきた"世界基準"。2017年、LPGAは50周年を迎え、選手だけではなく、トーナメントを担うさまざまなスタッフも、世界基準を合言葉に日々、研鑽を積んでいる。
たとえば競技委員。現在、採用されている統一ルールをつくったR&Aが主催するレフェリースクール「レベル3」が昨年、日本で初開催された。レベル1から始まり、最も高度な規則教育プログラムに、LPGAからも6名が受講、難関のテストを経て合格した。より高い技術で、今シーズンからトーナメント進行を図って行く。今回はレベル3をパスした競技委員・井上奈都子、森岡まゆみ、新庄正志が、その奥深い世界を語ります。
――レベル3に合格したときの心境は?
井上「テストの合格通知が届き、まずは肩の荷が下りました。受験には学習が必要です。約半年間、さまざまな問題集などと首っ引き。ただ、シーズン中で結構、時間をやりくりすることが大変でした。出張時はコースでも、ホテルでもルール、だったから…」
森岡「合格してほっとした。受験勉強は、学生以来でしたから。確かに、合格することが目標だった。といって、テストだけが重要ではありません。私は講義の内容が素晴らしいと感じた。とりわけ、不適合クラブを見定めることは財産だと思う。ルールは把握していても、壊れたクラブなど、実際にさまざまな現物をみたのは初めて。百聞は一見にしかず、でした」
新庄「レベル3は、レフェリーという立場だけでなく、これから競技委員を育成する、講師もつとめます。選手、会員へルール教育を徹底して、必要があれば協会以外でも役に立てればと考えている。競技委員は何かを生むのではなく、いかにスムーズに進行させるか。何事もないことが成功になり、達成感を得る役割。そのあたりが、不思議なところです」
――やりがいがある仕事だと感じる時
井上「トーナメント期間中は、緊張を解くことはない。たとえ、ホールアウトしてからでも、後から問題が発覚することがありますから。常にスイッチは入れた状態です。その反動がトーナメントへ行かない時に出る。とにかく、脳と体を休めること。ボーッとしている時が心地いい。オフは何もしないが、私の流儀になりました」
森岡「競技委員だけが知る世界がある。早朝、スタート前のチェックは、コースが違った表情を見せてくれます。誰もいない。実にぜいたくですね。昼は、ギャラリーがつめかけ、人があふれて、夕方にはまだ無人の空間が広がる。当たり前で、そんなことか-と思われるかもしれないけど、私にとって実にぜいたくな時間、やりがいを感じます。
新庄「競技委員になったのが、昨年でした。現場で、忘れられないのは、『大東建託・いい部屋ネットレディス』最終日です。1番(パー3)の担当でした。ここはグリーン左に池があり、ボールを打ちこんだ場合、どこから入ったかの確認がポイント。各選手、池に入れることがなかったけど、最終組のある選手が左へ曲げてしまった。実はこれが1人で行う、最初の処置。今思うと、基本的なことだったけど、当事者以上に舞い上がっていたかもしれない。独り立ちの瞬間は生涯の思い出でした。そばにいたにもかかわらず、任せてくれた委員長の森岡さんに感謝すると同時に、迷惑をかけずにすんで本当に、良かった」
<次回に続く>