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2017.12.18

運命の片道切符 岩本砂織、魂のコーチング

<Photo:Masterpress/Getty Images>

 スーパーレディは、スーパーコーチへ。岩本砂織は、今年LPGAへ入会しプロとしてのスタートを切った、畑岡奈紗、勝みなみ、新垣比菜など黄金世代の良き理解者だった。2015年、LPGA会員で初めて、日本オリンピック委員会の強化スタッフに。また、JGAナショナルチームのテクニカルコーチへ就任した。

 「難しいと思う前に、何をやりたいのか。どんなことを目指しているのかを、よく話し合う。理論だけを押し付けても、それは伸びる要素につながらない。たとえ相手がプロフェッショナルでも、アマチュアでも同じことです」。控えめで、やさしい先生だ。初対面の時から安心感に包まれた。ティーチャー・オブ・ザ・イヤーを受賞した今日は、晴れの日である。まさか―。

 ゴルフを知ったのは、中学時代だ。岡本綾子が日本はもとより、米ツアーで大活躍。「岡本さんが、夢を与えてくださった。そして、自分なりに人生設計。高校を卒業したら、プロを目指す」と誓いを立てた。技術の前に体力をつける。山口県は、ハンドボールが盛んだ。「高いレベルでスポーツをやりたい。それで、ハンドボールです」。

 とまぁ、ここまでは計画通りだったが、卒業後、交通事故に遭遇して療養を余儀なくされた。ところが、これもまた運命。1990年、森口祐子が優勝した日本女子オープンをテレビ観戦し、全身に感動が走る。「優勝して、井上清次先生と森口さんが抱き合ったシーンが忘れられません。あの先生から指導を受けたい。絶対にうまくなるという確信のようなものがありました」という。そんな気持ちを両親へ伝えると翌日、新幹線のチケットが手渡された。

 「母から、行くも行かないも、あなたが決めなさい、といわれ、井上先生がいらっしゃる岐阜関カントリー倶楽部へ。お約束などせずに、フロントで8時間、それから練習場で2時間、お待ちしていた。最初は、帰れ、といわれたけど、切符は片道しかもっていません、と必死に訴えたら、両親へ確認の電話をした後、こんな子は初めてだ…。しぶしぶ弟子入りを許されました」と話した後、「私が最後の弟子です。半年ぐらい経って、先生がご病気で療養することになり、次を探すことになった」と明かす。

 片道切符は、終着駅がない。岐阜から米国テキサス州へ向かうことになろうとは、本人も思わなかった。92年フジテレビとホリプロが共催した女子プロ育成プロジェクト『スーパーレディ』第1期生へ応募。3000人の中から、選出された1人になる。米ツアー88勝のキャシー・ウィットワースから、ツアープロについて学び、レッスンの神様、ハービー・ペニックと出会った。ベストセラーの《グリーンブック》では、岩本の体験がテキストとして取り上げられている。

 「日本に、こういう先生がいたらいいなぁ。学ぶことに感動しました。で、30歳から、本格的に教える仕事を。こちらが答を出しても、生徒さんは、すぐに忘れてしまいます。自分で答を引き出し、正解へ導くお手伝い。私は、相手の視覚、聴覚、触角を第一に考える」と結んだ。なるほど、日本にもこんな先生がいる。

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