2017.12.18
ビジネスはまごころ 土井二美、世界転戦の果てに
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
地下へ降りる階段は、虎の穴に通じてはいなかった。スタジオには、各所で笑顔がはじけている。学芸大学駅にほど近いビルのフロアで、既存のゴルフスクールとは一線を画したドゥワンゴルフアカデミーがあった。ゴルフビジネス賞は、土井二美の経験と哲学がもたらしたものだ。
ゴルフを始めたのは19歳。世はバブルの真っ盛りだ。「父はサラリーマン。趣味でゴルフをしていた。そんなこともあって、テレビ中継を見るのは、我が家で儀式のようなもの。岡本綾子さんや小林浩美さんなど、スター選手が出て、何と華やかな世界だろう、と感じたのが私のファーストインパクトでした。おまけに、優勝すれば、高価な車が副賞でいただける…」。
当時は、高校生で、山岳部の一員だ。「風を読む。グリーンの芝目を読む。自然と同調して、意志が反映されるスポーツです。山に登ることと、共通するものがあった。幸い、大学でゴルフ部があり、監督はアマチュアでも勝敗を優先するのではなく、まずゴルフの奥深さなど、歴史や伝統などから教えを受けたことが良かったと思います」。6年のキャリアで、プロのライセンスを取得したのは、現在の状況からすれば、恐ろしく早い。
師事した藤村政代からは、テクニックとプロの生き方を学んだ。「先生は、自分の力で試合へ出る権利をとれ-。推薦などは認めてもらえない。だから、私が66期生でレギュラーツアーへ出場したのが一番遅かった」と話す。一方で、トレーナーとの中田佳和から、体をいかにして使うか、の指導を受ける。「ドライバーで200ヤードも飛ばない。山岳部にいたから、かなりの力自慢だったにもかかわらず、です。その原因が、インナーマッスルの使い方にあることがわかりました。テクニカルなことも大事だけど、フィジカルも」。
キャリアで目を引くのは、世界30ヶ国でプレーしていることだ。アジア、南アフリカ、ヨーロッパの各ツアーを転戦する。「元々、30歳になったら、ゴルフの魂に出会う旅に出ようと思っていた。世界中で、いろいろな人のお世話になり、ゴルフの素晴らしさを再発見。でも、そういう生活をずっと続けられるわけではない。2003年からジュニアの指導を並行して行うようになった」と語った。
生涯スポーツを楽しむために、レッスン、フィットネス、メンタル、ボディーケアを一体にした独自のプログラムを開発。経営者として成功をおさめる。最近では、自身の出産体験を踏まえて、キッズの運動教室へのチャレンジがスタートした。「娘は、お腹にいた時から、私がボールを打つ音を聞いていた。物心がつくと、置いてあった、プラスティックのクラブを自分で握りはじめたことにはビックリ」という。
その上で、「年齢に関係なく、ゴルフを楽しむのはケガをしない体づくりが大切です。技術は裏切ることがあっても、体は裏切りませんよ」。幼児から、老若男女が集う、微笑みの空間には、土井の情熱とやさしさがあふれている。
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