2017.12.22
LPGAスペシャル 馬渕明子館長をたずねて①
<Photo:Ken Ishii/Getty Images>
空が抜けるように青い。次の50年へ-どんな1歩を踏み出すか。長いようで、とても短く感じたシーズンを振り返りながら、LPGA会長・小林浩美は東京・上野恩賜公園を散策した。癒しや気持ちの切り替えが必要になると、ここへ足が向く。この日は、国立西洋美術館・馬渕明子館長を訪ねた。ユネスコの世界文化遺産に指定され、ル・コルビュジエが日本に残した唯一の建造物は何度、拝見しても魅力的だ。館長室でスポーツと文化をテーマに、いろいろなお話を-。
初対面のあいさつをすませると、馬渕館長の視線は小林の着用するジャケットへ。左胸のエンブレムが気になる様子だ。
馬渕「歴史を感じるデザインですね。最近、そういったエンブレムつきのジャケットって、本当に少なくなってきた。すごくいい。私はそう思います」
小林「古くからの慣習です。クラブライフのなごりだと思います。確かに、ワッペンをみかけることは、なくなりましたね」
馬渕「LPGAさんは、女子スポーツの協会で50年の歴史がある。とても長い。日本女子サッカーリーグも来年、おかげさまで、30周年を迎えます」
小林「歴史とともに、スポーツは文化に変わっていかなければなりません。館長の考える-スポーツと文化とは、いったいどんなものでしょうか」
馬渕「スポーツを観戦し、参加もする。そうしたことが、日常生活のリズムになることでしょうね。それを世代間で伝えていく。おじいちゃん、おばあちゃんからお孫さんへ。そういうつながりです。地域が共感する意識にもなる。私は、それらすべてが文化だと思う。目に見えないけど、かかせないものです。サッカーの場合、隔週で週末は、ほぼホームの試合がある。ホームの試合がない週末、サポーターは、心にぽっかりと穴があいてしまったような気分になります。これも文化でしょう」
小林「地域で連綿と続く、お祭りのようなものですね」
馬渕「一時的にワーッと盛り上がっても、熱が冷めると、すぐに忘れられてしまうものは、文化とはいえない」
小林「先ほどから、気になるものが…。FCバルセロナのユニホームが額装され、あそこにありますね」
馬渕「メッシのサイン入りです。お土産にいただきました。ビジネスの世界でも、サッカーがコミュニケーションツールになる。メッシを知っていれば、初対面の方も、人間関係がスムーズになります。これも、文化といえるでしょうね」
小林「向かって左側は、日本代表の本田選手のユニホームでしょうか。思った以上に、細身で驚きました。ところで、サッカーファンになったきっかけ、といいますと」
馬渕「ユニホームは(日本サッカー協会)前会長の大仁さんが、私を副会長に-という時のプレゼント。サッカーへ興味をもつようになったのは、Jリーグ発足あたりです。テレビ放送から入り、次に観戦へ行こうとしたら、チケットが取れない。そんな状況が続いていました。しばらくして、中田英寿さんがイタリアのセリエAへ移籍。それなら、海外で見ればいい、と思い立った」
小林「スケールが違いますね。そうだ、京都行こう-のノリですね。すごい行動力」
馬渕「ただ、ドイツのワールドカップを最後に、中田さんが引退してしまう。空白期間ができました。でも、そこでサッカーをみなくなるのはつまらない。代わりを探した。海外で活躍できそうなオリジナリティーのある選手を。見つけたのが、名古屋時代の本田さんでした」
小林「ごひいきの選手をみつけることは大事です。その際、どんなことがポイントですか」
馬渕「本田さんは発想、発言が他と違った。独創的な選手を探しました。それが、基準。2008年、オランダへ移籍した頃、私はパリで約半年、滞在していたから、ちょっと足を延ばして観戦していた。そんな話が、サッカー協会へ届いたのでしょう。現在、JFA副会長の他に、なでしこリーグの理事長もお引き受けしたのは、女子選手の代弁者、女子選手の視点に立って、物事を見ることができるのではないか、と感じたからです」
小林「シーズンオフ、私もスペインへ行った際、カンプノウで、バルセロナの試合を見る機会に恵まれました。メッシが、バーンと4ゴール。ものすごい迫力でした。その後、レアルマドリードも見て、サポーターの応援に仰天したことを覚えています」
馬渕「サポーターにとっては、試合で負けると不愉快な1週間を過ごすことになる。だから皆さん、必死。熱の入りようが違う」
小林「迫力はピッチとスタントが一体になってつくりあげるものです。カンプノウでは、巨大なグッズ売り場に目を見張りました。ここまで、やるの…。私、そう思った」
馬渕「あれほどアイテムの数があれば、素通りはできない。買わなくては帰れない」
小林「大人買いをした、数少ない経験をカンプノウでしてきた。メッシ、おそるべし、でした」
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