2020.8.19
申ジエ~スペシャル・トリロジー パート3
どうしたら、こんなにやさしくなれるのか。申ジエからお話をうかがうと、いつも感じることだ。リモートでの取材。思い切って、聞いた。昨年の大王製紙エリエールレディスオープンで発生したトラブルのことを。
――試合中の移動で、ファンとハイタッチをして、右手首を痛めたことをひとことも口にしなかったのは、なぜ。
「すべてが私の不注意だからです。ナイスプレーをした後、ファンの方は私を祝福してくださる目的で、ハイタッチを求めたから。それで、手首をひねったのは注意が足りなかったからでしょう。もし、あの時、痛いという素振りをお見せしたら申し訳ないと思いました。当然、ガマンをしなければなりません。だから、あの後も黙っていた」
思いやり、気配り。なるほど、勝負の世界で良き勝者、良き敗者でいられることがわかった。さて、プライベートでは、どんな人なのか。
――同じ1988年、パルパル世代のイボミさんが結婚。ジエさんはいかがですか。
「去年の暮れ、イボミさんの結婚式へ出席。おしゃれで、きれいなシーンをたくさん目の当たりにして、私も32歳になったことを思い出した。確かに、プライベートは大事ですけど、私の心は人間・申ジエよりも、プロゴルファー・申ジエの方に今はウェートが乗っている。確かにゴルフは、結婚してでも継続できると思う。ただ、プロとしての仕事、役割がたくさんある。今はまだ、恋愛よりもゴルフに夢中。すべてやりきった。そう思ってからでしょう。人生、100年時代ですからね」
――男性は、どんなタイプが好みですか。
「プロゴルファーは移動が多い。直接会うことよりも電話でお話することが多くなるでしょうね。ということで、私は声のステキな方がいい。それだけではありません。言葉遣いも。きれいな言葉を自然に使える男性がいいです」
今回、通訳として同席したチェジウォンさんがその時、目を見開いた。あとでうかがうと、初めて聞いたエピソードだったとか。
――いつも、おしゃれですね。ファッションなど、コースを離れれば全く異なるのは、なぜ。
「オンとオフをきっちり分けることが、ライフスタイル。そうしなければ、プロゴルファーは続けられない。ただし、うまく切り替えができれば、パワーになる。ファッションのポイントは、何が似合うかを自分自身が把握していなければいけない。いくら流行といっても、似合わない服を着る心持ちにはなれない。ファッションセンスって、私はそういうものだと思います。また、似合うファッションをすれば、背筋が伸びて姿勢が良くなる。TPOをしっかりわきまえ、雰囲気に合わせることを大切にしている」
――選手として、ギアのこだわりもかなりのもの、とうかがいました。
「ひとつ、エピソードがあります。私のアイアンはミズノ。USLPGAツアーのメンバーになってから、ずっと使わせていただいています。韓国からアメリカツアーを転戦して2年ぐらいした時、フィーリングに合うアイアンを探していた。USブランドをテストしても、なかなか、これだ-というものが見つからない。そんな時、ゴルフ雑誌を見ていたら、ミズノさんの広告を見つけた。アマチュア時代、使っていたことを思い出して…。何で忘れていたのだろう。そこで、私から試させてください、と電話をしました。決め手は打感の素晴らしさ。インパクトの瞬間、手応えがすぐにフィードバックしてくる。分析がすぐできます。本当に好き」
――パターも、苦労して手に入れたホワイトホット♯4。
「はい。パターは感覚が大事。自分の腕のような安定感があります。浮気はしません」
――2020-2021シーズンの目標はこれまで同様、賞金女王ですか。
「はい、賞金女王を目指します。シーズンが長くなったので、逆にチャンスが増える。プラスにとらえている。日本で、皆さんとお会いすることを楽しみにしています」
トリロジー(3部作)で、アイデンティティーをたくさん。ゴルフの素晴らしさを、また垣間見た清々しい気持ちがしました。
(メディア管理部・中山 亜子)