堀琴音ついに、ついに　激戦を制しツアー初優勝

＜Photo：Toru Hanai/Getty Images＞

　JLPGA ツアー2020-21シーズン第33戦『ニッポンハムレディスクラシック』（賞金総額1億円・優勝賞金1,800万円）大会最終日が11日、北海道苫小牧市・桂ゴルフ倶楽部（6,763ヤード/パー72）で行われ、堀琴音が大接戦を制した。勝負は通算14アンダーで並んだ若林舞衣子とサドンデスのプレーオフへ。難度ナンバーワンの18番を使用した決戦は3ホール目、堀がパーをセーブし、悲願のツアー初優勝を決めた。3位タイは通算9アンダーで高橋彩華、植竹希望。東京オリンピック代表・稲見萌寧は通算2アンダー、22位タイだった。
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　肌がひりつくような攻防戦は、スタートからすべてが見どころだった。マッチプレーのような展開でプレーオフへ。そして、堀琴音がJLPGAツアー初優勝を飾った。14年の最終プロテストで合格してから6年344日。165試合目でつかんだ栄光は見るものすべてに感動を与えた。

　PO3ホール目。残り171ヤードの第2打をU5でピン手前3メートルにつけた。若林舞衣子はボギーを叩く。2パットで慎重にVを手繰り寄せる。「パーパットを決めると、シードを落とした時からの苦しかったシーンが突然、よみがえてきて…。そして、真っ白の状態になって泣いてしまった」と、はずかしそうに語り、「本当に長かった」と加えた。

　この日は久々に体験する最終日、最終組。「緊張というより、ワクワクしていた」という。スタートから、勝利への執念がみなぎり、ショットメーカーらしいシーンを随所で演出。1番で残り163ヤードの第2打を6Iでピン手前2メートルに寄せ、幸先の良いバーディー発進を決めた。

　また、3番の第3打も切れ味抜群。残り87ヤードの第3打を50度で、80センチのバーディー。そして、6番第2打では、残り120ヤードをPWでピン10センチのスーパーショットを披露した。

　ただし、2打差で首位スタートの若林も数少ないチャンスをモノにして、まったく崩れる気配はなし。14番で1打差に迫り、続く15番で勝負をかけた。5メートルのバーディートライ。「とれば追いつける。勝ちたい。5メートルのパッティングでしたけど、気持ちでカップインさせたと思います」と話し、「追いつけば離される。また、食らいつく。そんな勝負展開。しかし、どんな状況でも優勝を目指す気持ちは、まったく揺るがなかったです。たとえ、18番で2打差をつけられていたとしても、あきらめなかったでしょう」とエネルギッシュなコメントは、苦労の連続だった賜物だろうか。

　スランプのサインは17年大王製紙エリエールレディス第2日、2番で、「アイアンショットが左崖下のOBから始まった」そうだ。「何をやっても、うまくいかなかった。ボールがまっすぐ飛ばないようになり、何でゴルフをしなければいけないのか…。そんなことばかりを考えたら、夜も眠れない。ゴルフをやめたいと何度も何度も思った」と苦悩の日々を、今だから－言葉にできた。

　ただし、「でも、ゴルフをやめられない。悔しいからです。人生はまだ続くのに、すっきりせずに終わりたくはない。以降は当たって砕けろ、でした」。18年から指導を受けた森コーチとの試行錯誤の連続で、苦労が自信に変わる。振り返ってみれば、桂ゴルフ倶楽部とは縁があった。

　「11年8月、姉(奈津佳)が桂ゴルフ倶楽部で行われたニトリレディスでプロデビュー。第1日を観戦しました。あれから10年です」。福嶋晃子・浩子に続き、史上2組目の姉妹優勝を成し遂げたことも、喜びを倍増させている。

　コロナ禍で異例となった今シーズン。若手が大活躍中だ。「黄金世代の選手など、簡単そうに優勝してしまうように見えた。みんなすごいなぁ」とJLPGAツアー新世代の印象を述べた。

　とはいえ、今大会のデッドヒートも特筆ものだろう。別表の通り、プレーオフ、接戦が多く、1ストロークの重みがずっしりとくる。単にレベルアップという表現だけでは片付けられない、各選手の努力と精進が毎週のように展開されてきた証だと思う。

　季節は本格的な夏を迎える。復活から躍進へ、「ツアーへ出はじめた新人の頃はシード獲得、優勝争いも勢いだけでした。ただ、苦労を重ねた分、技術が向上したと思います」。デビュー時から6キロ、体重が増えた。たくましくなったのは体形だけではない。優勝会見も感動を誘った。

(メディア管理部・中山　亜子)