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2022.10.30

最長ブランクV 金田久美子-苦闘の11年

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 JLPGAツアー2022シーズン第34戦『樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント』(賞金総額8000万円、優勝賞金1400万円)大会最終日が10月30日、埼玉県飯能市・武蔵丘ゴルフコース(6650ヤード/パー72)で行われ、首位スタートの金田久美子が通算9アンダーで逃げ切りV。88年ツアー制度施行後の最長ブランク優勝を更新した。初優勝から11年189日を経て、2勝目。2打差の通算7アンダー、2位は川﨑春花が入った。
 一方、USLPGAツアーから参戦した、ディフェンディングチャンピオン・渋野日向子が68をマーク。28位タイから8位タイへ食い込む健闘を披露した。
(天候:曇り 気温:17.6℃ 風速:1.8m/s)
《グリーン=スティンプ:12 1/2フィート コンパクション:24.5mm》

 飛び跳ねながら優勝会見へ臨んだ。金田久美子、11年189日ぶりの最長ブランクVは感動的。しかも、あきらめなければ実現する-というファンへのエールのようにも思った。

 「1日は長かったけど、私からすれば結構、アッという間。あがりの3ホールをどうにかこうにか勝負したい。17番でバーディーが来た。いい1日でした」と振り返る。前週までとは一変した勝負強さを披露。その理由を、「勝ち方というのかなぁ。ここを決めなければいけない。そんなホールが何ホールかあった。マネジメントをしっかりできたし、客観的に自分のプレーをとらえられたと思います。それなりに勝負所を逃さずに乗り切れた」と説明している。


<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 とりわけ、最大のピンチと解説した7番・第3打がターニングポイントだった。「元々、バンカーショットはすごく得意。それが、不調に陥った6、7年前ぐらいから、苦手に…。トップをしたりして、いろいろです。考えてみると、スイングを変えているわけですから、アドレスなの細かいところまで変化をさせなければいけない。でも、アマチュア時代からずっと感性重視でプレーしてきた。少しの狂いが積み重なり、もうガチャガチャです。7番のバンカーはすべてを見直したからできた。あれだけ練習している。ビビるな。活を入れた」そうだ。

 腹をくくってショット。見事、ピンから1メートル寄せるリカバリーで、パーセーブに成功した。「最終日は、イーブンパーでプレーできれば勝てる、という設定。まったくというわけではないけど、他の選手のスコアを意識はしなかった。勝負が見えていたというのかなぁ。とにかく集中した」。

 終盤、追い上げて2週連続優勝を目指す川﨑春花が1打差に迫ってきたが、17番では残り160ヤードの第2打を、7Iで1メートルへ。楽々とバーディー奪取でベテランらしい勝負強さを披露した。

 ただし、それができたのはどん底まで落ち込んだ苦悩の後を無視するわけにはいかない。「あのシーンでも地に足がついていた。距離はなかったけど、イヤなラインでしたから」。


<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 フーッと息を吐き出し、左上へ視線を移す。意を決したかのように正面を見ながら、「もう一度、優勝できる。信じてきました。5、6年ぐらい前は1Wが左へ曲がり、キャリーで140ヤードぐらい。第2打でグリーンをとらえることができなかった。おまけにピンから50センチのパッティングまで外すありさま…。こんなはずかしいプレーをしていたら絶対に勝てない」。ツアープロ継続の窮地にたたされた。

 もちろん、精神面でも。「現実、理想、目標がバラバラで、それなりに私は受け入れてきたけど突然、ゴルフ場を見ただけで涙が出てくる。クラブハウスへ入るとじんましんが出てきて…。精神的に追い込まれていたのでしょうね」と、苦悩を一気に吐き出した。

 そんな状況から脱出できたのは、復活を信じてうたがわなかった周囲のあたたかい励まし。「私はスタンレー電気の所属です。(21年1月に)亡くなった北野隆典社長は私を信じてくださり、どんな時でも応援を…。手を合わせ、優勝を報告したいと思います。また、79歳の父へ元気なうちに優勝をみせることができて、ホッとしています。きょうは私が緊張してしまうといけないから観戦を自粛。自宅で応援です。皆さん、ありがとうございます」と、次々に感謝のメッセージを述べ、最後に今大会の冠でもある、「樋口(久子)さん、アマの頃からトーナメントであたたかいお叱りの言葉をたくさんいただきました。まさか、その樋口さんの大会で優勝できるとは…。ちょっとヘンな気持ちもしたけど、ご恩返しができました」とも。

 元天才少女は苦労に苦労を重ね、プロゴルファーがもっとも難しいといわれる、通算2勝目を飾った。まさに大団円。すごいドラマを目の当たりにした。


<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

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