2022.11.1
ツアー強化10年《スタッツ増加》
<Photo:Atsushi Tomura/Getty images>
11月。シーズンの残りは4試合となった。2013年から世界基準の選手育成を目標に、さまざまなツアー強化をスタート。着実に成果が出ていることは一目瞭然だろう。各試合の優勝争いが激しさを増している。ベテラン勢を脅かすほどに若手が台頭。ツアー選手の若年化が進行中である。
かつては経験、感性が主だった。今では当然、その上に確証となる、数字での見える化は重要。
キャリアが浅くてもツアーのトップを争う若手が増加した要因のひとつに、16年から着手した「スタッツの充実化」があげられる。協会は、20年までに30項目へ増やす目標を掲げ、19年に1年前倒しで達成した。
ツアー、また選手にとってどんな変化があったのだろう。「17年以前、シーズンを通してデータをとっていたのは平均ストローク、パーオン率、平均パット数など7項目。その内、ドライビングディスタンスはシーズン1回でした。選手の長所、努力が必要な所を数字で可視化することは重要なツアー強化の一つです。なので、17年から毎試合、予選から決勝まで毎日、出場選手のスタッツデータを実測して、より細分化した数字で、データ精度を高めていきました。選手は、スタッツ項目と数字を照らし合わせることで、各自の能力向上へ役に立てていると強く感じます」。JLPGA会長・小林浩美は確かな手応えを得ている。
というのも、自身の経験を踏まえ、「私がスタッツを利用するようになったのは、米女子ツアーへ参戦した90年からです。すでに米ツアーではスタッツデータがあり、自分の長所と短所が数字でどのぐらいのレベルにあるのかがわかった。優勝する、あるいは賞金ランキング上位に入るためには、平均ストロークをよくすることは必須です。なので、毎年、0.1以上でも減少できるように、さまざまなスタッツの項目を読み解きながら、技術などの向上に役立てました。たとえば、パーオン率を見てよりアイアンショットの精度を高め、アプローチとパッティングでパーを拾う確率を高めるなど。私が最も大事にしたのは、平均ストロークの数字を少しでも良くしていくということです」(同)と説明した。
<Photo:Atsushi Tomura/Getty images>
一方で、近年のツアーではトラックマンなどのデータ計測器が浸透。「打球の弾道、回転数、打ち出し角度などを、各選手がより詳細に把握して、飛距離の向上、ショットとパッティングの精度など総合的な向上がみられ、全体の平均ストローク減少へつながっている。特に10年前と比較し、目を見張るものは100ヤード以内のショートゲームの精度でしょう。ピンそばに寄せるショットが数多く見受けられる。爆発的な60台のスコアを生み出す原動力へ、つながっていると感じます」(同)と、続けた。
今後の協会の展望として、追加したいと考えているのは、ストローク・ゲインドの項目。米PGAツアーでは選手の能力を評価する重要指標。コロンビア大学ビジネススクールのマーク・プローディ教授が考案した。算出するためには全選手・全ストロークの距離、ライの情報取得が必要だ。ハードルが非常に高く現状は見込みこそ立ってはいないものの、実現すれば、距離別パーオン率、アプローチの距離別リカバリー率なども追加可能になる。
年 | 追加数 | スタッツ数計 | 追加スタッツ |
2016 | 7 | ①ドライビングディスタンス | |
2017 | 10 | 17 | ①トータルドライビング |
2018 | 8 | 25 | ①トータルドライビング |
2019 | 5 | 30 | ①予選ラウンド平均ストローク |
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