2023.1.26
春を待つ94期生~須江 唯加
<Photo:Yoshimasa Nakano/Getty Images>
コロナ禍の難しい調整を克服。2023年、プロ2年目のスタートを切る。21年11月、29.2倍という、狭き門を潜り抜けた94期生は逸材揃い-との評判が高い。
すえ・ゆいか=1999年7月20日、岡山県津山市出身
何かが変わった。それは本人だけが知ること。「時間がかかりました。でも、やらなければなりません。だって、私はゴルフが大好きだから」と、飛び切りの笑顔を浮かべた。
「1月後半から、あたたかい所へ行って、合宿をします」。つとめて前向きだ。何しろ、今年は年女である。干支がひと回りするまで12年。しばし、その12年前を思い起こす。
「小学5年生ぐらいから、地域の小規模な試合へ出るようになった。その時、学校以外ではじめて友だちができて、心の底からうれしかったです。となれば、もっと試合へ出場してみたくなる。その次の喜びは成績が良くなったことかなぁ。そんな時を過ごしながら、プロゴルファーという職業があることを知りました。こんなに楽しいことをしながら生活ができればいい。子どもだった、といえばそれまでだけど…」。
最終プロテスト挑戦4回目、晴れて合格を果たす。年に一度のチャンスが与えられるだけだ。「プロテストへ向かう時、交通事故にあったことも…。ついていない。ひとことで片付けてしまうにはながかったなぁ」と、しみじみ漏らしている。その上で、「資格試験といえば通常、何点とれればオッケーでしょう。でも、プロゴルファーは違う。スコアではありません。最終プロテストでトップ20位を争うもの。1次試験から勝ち抜かなくては会員にはなれません」と、厳しい競争の跡を改めて語っている。
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
22年は、ステップ・アップ・ツアーの開幕戦で3位タイと好スタートを切った。ところが、第2戦・第2日に81を叩くと負の連鎖が襲来。「まったくイメージが出ない。まず、第1打がダメ。残り距離が長くなり、パーオンがうまくいかない。いろいろ、原因はあるけど結局、クラブを振り切ることを怖がっていたわけです。そんな気持ちでプレーをすれば当然、体が硬直してうまくいくわけがありません」と説明する。不調は半年間も続き、予選落ちが続いた。
もちろん、その間も、さまざまな試行錯誤を繰り返したもののうまくはいかない。そこで、「もう、気楽にやろう-しか手がなかった」という結論に達したそうだ。そんな気持ちが固まってきた矢先、ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンへ推薦出場の誘いが舞い込む。「去年、初めてのJLPGAツアー。気楽ではなかったけど、気楽な気持ちでプレーをしたら、久々に予選通過を果たし、立て直すことができた。ただし、肝心のQTで失敗。しかも、得意のパッティングが原因した」。今季のQTランキングは201位と再び、試練へ直面する。
それだけに、「23年、試合へ出られないかもしれませんね」としながらも、「ステップは西日本で試合が多い。私は岡山作陽高出身で、ゴルフ部の監督さんにもいろいろと相談をしてみます。岡山県はゴルフが盛んですから、推薦をいただけるかもしれません。また、ものは考えよう。去年は何をしていたのだろう、と考えもしたけど、逆にJLPGAツアーへ挑戦できる。主催者推薦予選会はすべて出ます。1試合でも突破できれば、私は変わると思う。そんな状況が決して、いいわけではないけど、思考を変えてみたらヤル気が湧いてきた」と、大きくうなずいた。
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
ゴルフとの出会いは両親の趣味が大きく影響。「私は一人っ子です。コースでは2人プレーでは追加料金がかかる。3人なら料金がかからない。それから、家族3人でプレーすれば、楽しみながら子どもの面倒まで見られる。そんなスポーツは他にはありません」とわかりやすく紹介した。
続けて、「イヤなことが続いても、ゴルフだけは改善しようと努力を続けることができた。そこまでできるものは私にとってゴルフだけ。なんで面白いんだろう、とはたまに考えます。でも、3日間、クラブを握らずにいるとプレーがしたくてうずいてきます。もしかして、依存症でしょうか。とにかくゴルフが好きです」が、最終結論だ。
自身を飾るわけではない。質問を正面で受け止め、本音を話した。さりとて、その場の雰囲気が暗くなるわけではなかった。興味深い取材である。人をひきつけ、エールを送りたくなるような選手。年女の今年、幸多からんことをお祈りいたします。
余談ながら、須江姓は珍しく、出身地の津山では菅原道真の後裔という伝もある。
(青木 政司)
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
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