2023.2.10
春を待つ94期生~村上 瑞希
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
コロナ禍の難しい調整を克服。2023年、プロ2年目のスタートを切る。21年11月、29.2倍という、狭き門を潜り抜けた94期生は逸材揃い-との評判が高い。
むらかみ・みずき=2001年5月18日、神奈川県秦野市出身
走る。朝の日課だ。所属先の富士国際ゴルフ倶楽部は、雪をいただいた雄大な富士山を望む絶好のロケーション。「コースを走ります。インはフラットですけど、アウトはアップダウンがきつい。体調や練習メニューにもよりますけど、最低でも9ホールは走る。景色を楽しむ余裕などありません。おかげさまで、持久力が少しついてきたような気がします」と話した。
22年は苦難のシーズン。最後まで自身のペースをつかむことができなかった。「連戦が続くのは初めての経験。常に頭の中では試合、試合…です。基本的なことができなかった。成績を残したい-とそればかりを考え、上達する練習ではなく、試合のための調整ばかりをしていたと思います。もっとも、その時は夢中でやっていた。去年の年末に1年を通しての反省というか、振り返りをするとそんな結論になりました」と漏らす。
逸る気持ちはスイングに表れた。「ちょっと窮屈というのかなぁ。伸び伸びとクラブを振っていない。おかげで、バーディーをとっても、次はボギーを叩く。それでは良い流れが来ません」と猛省したそうだ。また、「他の選手と比較すると、すべてが物足りない」が自己評価。厳しい目で見直した。
<Photo:Ken Ishii/Getty Images>
一方で、得意クラブが安定と信頼をもたらすことも実感。「得意距離は細かくいうと、135ヤード。8Iを少し強めに打つ。私、8Iが好きです」。その要領で、現在は練習時間を大幅に増やした。「時間を割いているのは、やはりパッティング。グリーンで練習するのはすごく好きだけど、得意ではない。それから、ショートゲームも。アプローチはいろいろな打ち方があります。創意工夫をしていけばすごく楽しい。練習は嫌いではありません。何しろ、課題がたくさん-ですから」と受け止めた。
ルーキーイヤーはJLPGAツアーへ3戦出場。すべて予選落ちを喫したものの、デビュー戦は生涯の思い出になるだろう。同組でプレーしたのは不動裕理、有村智恵。開幕前日、あいさつへ行くと、有村から、「やはり緊張するでしょう。でも、大丈夫。不動さんはとてもやさしい方だから、心配いりません。いいプレーをしてください」と激励された。また、試合後、その有村は、「どんな状況でも、あきらめずにプレーする姿が格好良かった」とSNSでエールをおくっている。
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
ひたむきだ。執筆の前日、電話があった。「同期の皆さんの記事を拝見すると、すごく内容がいい。私、あまり良いお話をできなかったけど…」。今時の若手とは思えない奇特な選手である。身の丈の話を一生懸命にしていた。
21年最終プロテスト受験の1カ月前。所属先の親会社が三甲株式会社へ変わっている。「幸い、合格はしたけど所属先などどうなるのか。結構、不安でした。でも、三甲の後藤甲平会長が所属で頑張ってほしい-とおっしゃってくださりました。すごく心強い。それだけではありません。会長は他のお知り合いの方へ、スポンサーをしていただけないか、と熱心に働きかけていただきました。アース製薬さんも、そのご縁です」。
今オフは所属先の他にも、グループコースで鍛錬を重ねている。「子どもの頃から、プロになることだけを考えていた。他に、何か、といわれてもプロゴルファー以外はない。コースにいるか、寝ているか。だから、趣味は寝ること。本当に寝ているんですよ」と、うつむきながら漏らしている。
正直で、つくろうことがない。1年前と大きな違いは、「絶対にうまくなる」と一途な信念がより強固になり、姿勢に表れてきたことだ。
(中山 亜子)
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