2023.2.15
春を待つ94期生~小林 夢果
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
コロナ禍の難しい調整を克服。2023年、プロ2年目のスタートを切る。21年11月、29.2倍という、狭き門を潜り抜けた94期生は逸材揃い-との評判が高い。
こばやし・ゆめか=2003年9月1日、埼玉県出身
プロ、アマを問わず、ゴルファーが永遠の課題とするものは飛距離だろう。誰よりもボールを飛ばしたい。ジャンボ尾崎が繰り返し語っていた。「飛距離は、最大のアドバンテージだ」と。
とはいえ、飛ぶということは諸刃の剣にもつながる。「子どもの頃から飛距離が出た。どうしてか、よくわかりません。体形がそれほど大きいわけではないし、握力にしたって37-8程度。だから、力任せでクラブを振っているわけではありません。自然体ですよ」。真顔で話した。つまり、これが備わった才能というものだ。
「かといって、飛距離は出ても精度がいまひとつ。悩ましいところです。持ち球はそれほど強くないドロー。どちらかといえば、ストレートに近いでしょう。平均すると250ヤードぐらい。冬場はさすがに、飛距離が落ちるけど、夏場になると260-70ヤードは飛ぶ。武器ですね」。8歳からクラブを握り、中学を卒業するとジャンボアカデミーで本格的に指導を受ける。最終プロテストも一発合格を果たした。いわば、逸材なのだ。
<Photo:Toru Hanai/Getty Images>
ところが、プロの世界では思い通りにはいかない。よりよい成績をあげるため、シーズン2年目へ向かうオフは、すべてを見直している。「アイアンショットが飛び過ぎてしまう。だから、クラブソールが薄いマッスルバックでコントロールを重視。苦手のパッティングはスタジオでデータを集め、分析しながら特訓中です。ジャンボ邸へうかがってトレーニングをしながら、練習の毎日。そのせいか、ショットの曲がり幅が少なくなったように思います」という。
さらに、クラブセッティングもひと工夫を。従来は、飛距離自慢らしくウェッジ4本がスタンダードだったが58度、54度、50度の3本へ変更した。新たに4UT、4Iを加える計画でいる。「まだ、慣れてはいないけど、パー5でバーディーをとるためです。残り200ヤードからチャンスを増やしたい。今年のテーマです」と説明を加えた。
一方で、ルーキーシーズンを終えて、ここが変わったといえることは、精神面だった。「試合になると緊張するけど、どんどん楽しくなってくる。練習とは明らかに違う。たとえば、私は6Iで170ヤードが基準。でも、アドレナリンの作用で均一ではなくなります。これは、ちょっと…。舞い上がっていると感じたらクラブの番手を下げる。去年の終盤からコントロールが少し上手になったかもしれない」。
プロゴルファーは悩みがつきない。しかし、飛びぬけた明るさの持ち主だ。しかも、個性的。将来、どんな選手になりたい-という質問に、「ちょっと変わったプロに」と即答した。「要は、目立ちたがり屋なんです。他の人と逆で行きたい。ちょっと変わったところで」とうれしそう。普段の生活でもそんな一面がある。
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
「食べ物の好みが変わっているかもしれない。鮮魚売り場の匂いが好きで、そこにいるとすごく落ち着く。貝が好き。あわび、かき、さざえ、なんて最高です。ブランドのバッグよりもそれがいい。コーラを飲みながら、新鮮な魚貝を食べる。幸せだなぁと思います」
さらに、意外な小学生だったことも明かした。「保健室が大好きで、おでこに冷えピタをよくはっていた。そんな私が今、プロゴルファー。びっくりです」。ICレコーダーを回していたから良かったものの、メモを忘れるほどトークに引き込まれてしまった。
夢は見るものではない。果たすもの。夢果の二文字はプロの気構えを表わす名前だった。規格外の超個性派へ飛躍の時を待っている。
(中山 亜子)
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