2024.1.16
JLPGA 新しいヒロイン《96期生・宋 ガウン》
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
そん・がうん=2000年12月5日、韓国忠清南道出身
年明け9日から渡米。フロリダ州オーランドで約1カ月半の調整を続けている。23年の最終プロテストで一発合格を果たし、勢いに乗ってQTファイナルステージでも1位の成績をおさめた。最終日の猛チャージでQTランキング1位となったことは、母国の韓国でも大きなニュースになっている。
「1位、おめでとうなど、お祝いのメッセージをたくさんいただきました。その中には、きっとJLPGAツアーはあなたにマッチするだろう。激励されて心から身が引き締まる思いでいます」と語った。
人との出会いは第一印象が肝心である。初対面で名刺を差し出すと、すかさず宋ガウンと印刷された名刺をいただいた。選手へ取材して、こんな経験は初めて。しかも「お会いできて、光栄です」と深々と一礼するおまけつきだ。実に気持ちがいい。
24年のテーマは、二兎を追う-だった。「JLPGA、KLPGAツアーで、それぞれ1勝をあげることが目標です。大変なことだけど、自分で決めたことですから体力が持つ限り精いっぱい努力する。きっとできるでしょう。不可能ではありません」と強い決心を言葉にする。
プロ4年目の今季、新たな刺激を求めた結果だ。「韓国でルーキーイヤーは初優勝を果たし、ツアーの新人賞もいただいた。広報大使にも選んでくださった。ファン投票で選出されるわけですから、大変な名誉です。2年目も1勝。でも、去年は優勝することができなかった。決して慢心があったわけではない。だから、今年は去年の分まで-ですよ」と説明を加えている。
7歳から趣味ではじめたゴルフが、10歳から将来のプロを目指し本格的に取り組んだ。当時から「世界中のツアーでプレーすることが夢」。ただし、むやみに挑戦しても意味がないことを自覚していた。成績が伴わなければならない。背伸びをせずに身の丈を考えていたからだ。
「一番に思い浮かべるのはUSLPGAツアーですね。アマチュアの頃から、プレーし、挑戦することを第一に考えてきたけど、距離がとても長くハードヒッターではない私には向いていない。去年はワールドランキングで出場することができたLETツアーの、サウジアラビアで開催した試合へ行きました。でも、ちょっと合いそうにない。それで最終的には今は、韓国は当然ですけど日本なら合うという決断です」。
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
ところが、本人の希望ばかりを優先することができないことが、プロの宿命でもあった。所属するMGセマウル金庫は韓国の大きな銀行だ。「ルーキーでツアーへ出場する時から、ずっとスポンサードしていただいています。韓国では第一金融、第二金融のグループに分かれている。セマウルは第2グループですけど、知らない人がいないと思う。それぐらい有名な銀行です」という。
それで、KLPGAツアーと並行し、JLPGAツアーを戦う背景がわかった。もちろん、それだけの自信がある。「年間のスケジュールは未定ですけど、JLPGAツアー開幕戦にはぜひ、出場します。私の武器はパッティング。高麗グリーンが特に好きですから」と区切り、「パッティングがセールスポイントですけど、最終プロテストやQTを経験して、すごく印象に残ったことは日本の選手の皆さん、パッティングがとてもお上手でした。実際に拝見して、私はパッティングに陣があります-なんてとてもいえませんね。もっと、もっと努力を重ねなければならないと感じます」。
一方、テスト、QTでは本名の宋佳銀だったものの、JLPGA入会の23年12月1日から、名前をカタカナ表記に変更した。「日本の皆さんから親しんでもらうためです」は推察できたが、ちょっとしたトリビアもある。
「私の名について、あまり深く考えたことはないけど、佳には美しいという意味がある。そして、家系図によって必ず、この一文字をつかうという掟が一族にあります。代ごとに決まっており、私の代は銀でした。それで佳銀」。なるほどねぇ。世界は広い。
(青木 政司)
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