2024.4.7
阿部未悠初V「ピンで撮られると恥ずかしい」
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
JLPGAツアー2024シーズン第6戦『富士フイルム・スタジオアリス女子オープン』(賞金総額1億円、優勝賞金1,800万円)大会最終日が4月7日、埼玉県鳩山町・石坂ゴルフ倶楽部(6,535ヤード/パー72)で行われ、阿部未悠がトーナメントレコードの通算15アンダー、201をマークし念願の初優勝を飾った。同じく初優勝を狙った佐久間朱莉が1打差の2位。イミニョンと蛭田みな美が3打差の3位タイに入った。
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《グリーン=スティンプ:10 2/3フィート コンパクション:23.5mm》
引き離されかけても慌てず、泰然自若としていた。首位に並んだ3人が最終組でスタートした最終日。ツアー初勝利がかかる阿部未悠は前半を終えた時点で、1イーグル・2バーディーの佐久間朱莉に2打差をつけられていた。それでも「もともとコースの難易度から見ても、勝負は後半。少しずつエンジンを温めて調子を上げていこうと考えていました」と動揺はなかった。
そして後半最初の10番パー4でバーディーを奪い、さあ追撃開始と気合を入れたものの、続く11番でボギーを叩き、つまずいた。「りきみ過ぎました。誰かに、まだ早いよと言われた気がしました」と苦笑するが、実はここをボギーに収めたことが、最終的に勝因となった。
というのも、ティーショットを左に曲げてラフに打ち込み、第2打は目の前の木を直撃。第3打がフェアウェイへ出すだけに終わった時点で「ダブルボギーでもしようがない」と覚悟した。しかし約7メートルのボギーパットを、「ショートだけはしない」と心に誓って強気にねじ込み、「心底ボギーで済んでよかったと思いました」と一息ついた。
続く12番パー5でバーディーを奪ったのが、本当の快進撃の始まり。13番のパーを挟み、14番からは4連続バーディー。一気に佐久間を抜き去った。
勝負を決めたのは、佐久間と首位に並んで迎えた17番パー5。フェアウェイ左隅から58度のウェッジを振るった76ヤードの第3打が、ピン奥1.5メートルにピタリと止まった。難なくバーディーを奪取し、ついに単独トップに立ったのだった。
既に優勝回数を重ねている古江彩佳、西村優菜、吉田優利と同じ2000年度生まれの「プラチナ世代」の1人。「その3人はもともとジュニア時代から世代のトップを走っていました。それほど成績を出したわけでもない私は、そのグループにはいないと思っていたので、焦りはありませんでした」と言うが、内心では、優勝カップを渇望していたのは間違いない。「私も早く優勝して、常に上位にいる選手になりたいと思っていました」とうなずいた。
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
開幕前のシーズンオフには、ゴルフ観に変化をもたらすきっかけがあった。以前からファンだったプロ野球・ソフトバンクの甲斐拓也捕手の自主トレに、共通の知人の紹介で参加したのだ。北海道生まれで、現在の生活拠点も北海道にある阿部だが、中学・高校時代は福岡県内の中高一貫校で過ごし、福岡を本拠地とするソフトバンクを応援するようになった縁があった。
「甲斐選手から、野球を楽しむという言葉を聞かされて、はっとしました。つらい時も苦しい時もあるけれど、私は本質的にゴルフが好きで始めたのだから、もっと楽しまなければと思いました」と説明する。
「最終日最終組で回ったことは、これまでにも何回かありましたが、勝つぞという気持ちが先走り、空回りしていたと、今から振り返ると思います。今日は、このパッティングを入れたら優勝だとか思わず、最後までゴルフを楽しんだことがよかったです」とうなずいた。
趣味は写真撮影で、ファンの間ではツアーきっての「カメラ女子」として知られている。最終日は報道陣のシャッター音を聞きながら「ああ、私がカメラマンでも、この桜をバックに撮るものなあ」などと考えていたそうだ。「ピン(1人)で撮られるのは恥ずかしいです」と顔を赤らめた。
一方で、「まだ優勝をしたこともなかったのに、今季の目標は最初から複数回優勝でした」と言い切る阿部。これからはツアーの主役として、存分に被写体となってほしい。
(宮脇 広久)
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