2024.9.2
ティーチング新時代・古家 翔香-の場合
アジアナンバーワンを決定する『ソニー 日本女子プロゴルフ選手権大会』。フィールドには132人が立つ。今回、クローズアップするのは古家翔香。紆余曲折を経て、ついに悲願が叶う。ツアープロではなく、ティーチングプロフェッショナル会員である。
今大会の予選会を突破した。「私もびっくり。すごくうれしい。出場はもちろん。観戦したこともありません。去年、日本女子オープンへ出場しましたけど、それとは、また別の楽しみがある。予選通過を目指して、もう一生懸命にプレーするだけですね。ただひとついえることは今回、いただいたチャンスをムダにはしないこと。本当に特別な試合です」と、言葉をかみしめるように話している。
「ゴルフ歴は12歳からになっているけど、初めてクラブを握ったのは5歳でした。あとは、プロになりたい。ゴルフで生活を立てられれば…。そんな感じでしょうか」という。99年12月1日生まれ。同世代には稲見萌寧、菅沼菜々などがいる。切磋琢磨を繰り返したものの、心の葛藤とも常に戦っていた。
「18年、最初の受験で最終プロテストに失敗。もう、失意のどん底というのか、この先は、どう生きていけばいいのかわからない。不安ばかりが脳裏に浮かんで、逃げたい-そればかり。だけど、他にやることがみつからなかったし、とりあえずプロテストには合格したかった。それで受験を続けてきたけど19年、私の中でもうやめよう-と区切りをつけて、家族やコーチに決断を伝えました」と、遠くを見るように一度、区切って続ける。
「JLPGAツアーは、どんどん若手選手が出てきて、競争が激しくなっている。もう、この先やっていけるか本当にわからない。区切りをつける時がきた、と決断したんです。そんな時、父からゴルフを続けてきたわけだから、ティーチング資格を取得するのも、人生の足しにはなるだろう。そういわれた。私は生きる糧というか、そういうものが欲しかったから、別の道でプロを目指すことに躊躇しなかった。本当に良かったです」と振り返る。
見方を変えれば選択肢を大きく広げたのだ。ストレートに歩む人生より、少し遠回りをしながら、あらゆることを体験することは心を豊かにし、脳まで大きく刺激することになった。
「ツアーではなく、ティーチングですけど、プロゴルファーとしての資格を得たことで、世間から認められる存在になった。とてもうれしいことです。資格を取る上で試験は当然として、研修会なども多く、視覚がワイドになった。教える立場として、相手に接するのはどういうことか。さらにコミュニケーションの取り方など、名刺交換の作法まで勉強できたことが一生の財産。社会人になった-背筋がピンと伸びてきました」
一方で、ライセンス取得でスポンサーが複数、名乗りをあげている。所属先は、はまだ産婦人科。「お世話になっているある方からの紹介です。和歌山にあり、理事長の濱田寛子先生とお会いして、いろいろなお話をうかがった。命をこの世に誕生させる方ですから、すごくパワフル。しかも全身から生きている、というエネルギーを感じる、とてもやさしい方です。また、私の父が整形外科医をしていることもあり、とてもご縁を感じました。皆さんが応援してくださるから、私はもっと努力を重ねなければなりません」と、口調に熱が帯びてきた。
今年は会員2年目。躍進の一年となっている。180位と、初めてQTランキングへ名を連ねた。8試合のステップ・アップ・ツアー出場で、最高成績はフンドーキンレディース3位タイ。直近の山陰ご縁むす美レディースでも4位に健闘している。しかも、すべて予選通過を果たしている。今季からステップでもリランキング制度を導入。第1回リランキングを経て、終盤戦の出場権を得ることはほぼ、確実だ。
7月、JLPGAティーチング競技会では1位となった。並行して、プロテストも受験中だ。次週は大事な2次予選が控える。
「ご覧のように、身長が154センチですから、体形に恵まれているわけではありません。だから、何倍も努力をする必要があります。セールスポイントはショットの精度ぐらいかなぁ。もっと、たくさん練習を重ねて、未知のいい面を引き出すことができればうれしいです」と、つつましく美しい微笑みに、こちらの視線が引き寄せられた。
多様性の時代。強い女子の生き方がここにある。
(取材・文 中山 亜子)
古家 翔香プロフィール
東京都出身、1999年12月1日生まれ
2023年1月1日入会
スタッツ:2024年明治安田ステップ・ランキング19位(2024/9/2時点)
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