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2024.10.13

「最高です」山下美夢有今季初Vで3年連続女王へ照準

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 JLPGAツアー2024シーズン第31戦『富士通レディース 2024』(賞金総額1億円、優勝賞金1,800万円)大会最終日が10月13日、千葉県千葉市・東急セブンハンドレッドクラブ(6,697ヤード/パー72)で行われ、山下美夢有が今季初優を飾った。勝負は通算14アンダーで並んだ、ホステスプロでしかも、今季のメジャーチャンピオン・古江彩佳とのプレーオフ(PO)。PO2ホール目、山下が大混戦にピリオドを打った。通算12勝目は11カ月ぶりのブランク。笑顔とともにホッと胸をなでおろす激闘だった。通算12アンダー、3位タイは桑木志帆、岩井明愛、櫻井心那。
(天候:晴れ 気温:25.4℃ 風速:3.2m/s)
《グリーン=スティンプ:12フィート コンパクション:21mm》

 「最高です。やっぱり優勝は違うな、と思いながら、歓声を浴びさせていただきました」。18番のグリーン上で行われた、表彰セレモニー中のインタビュー。声を上ずらせた山下の頬を、幾筋もの涙が伝った。昨季5勝を挙げた2年連続年間女王にとって、今季初勝利への道のりはあまりに長かった。

 プレーオフで一騎打ちとなった古江彩佳とは、共通点が多い。年齢は山下の方が1歳下の23歳だが、ほぼ同年代で、出身も関西同士。幼少の頃一緒にゴルフを始めた父親が、今もかけがえのないコーチ役を務めている。磨き抜いた技術と圧倒的な安定感で、世界に通用するトッププロとしてプレーしている。

 宿命の対決とも言えるプレーオフは、舞台となった18番パー4で、グリーン手前に口を開けた深いバンカーが勝負を分けた。1ホール目の第2打で、そこへ先に打ち込んだのは山下だった。バンカーショットが絶壁を上り切れず、足元まで戻ってきてしまった選手が何人もいた「蟻地獄」から、山下は鮮やかに脱出し、ピンまで4メートルに寄せる。パーパットこそ惜しくもカップの右を通過したが、ボギーに収め、グリーン右のラフからのアプローチを寄せきれなかった古江とタイで終えた。

 こうして迎えた2ホール目。今度は古江の第2打が、このバンカーに捕まり、しかも絶壁の際にボールが止まったことから、第3打はピンへ向かって打つことができず、横へ出すしかなかった。約18メートルのパーパットが惜しくもピンに弾かれた古江に対し、山下は第2打をピン横6メートルに載せ、2パットで勝利をもぎ取った。


<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 この日は、首位に2打差の2位からスタートし、11番までは7バーディー・ノーボギーの快進撃で単独首位に立ち、独走態勢に入ったかにみえた。ところが13、14番でいずれも3パットし、まさかの連続ボギー。「なかなか優勝できない今年のプレーを象徴しているようでした」と振り返ったが、今季初Vへの重圧のなせる業だったのかもしれない。

 最終18番では、約13メートルの長いパーパットをねじ込んだ。「入れるしかない、と思って打ちましたが、実際にはなかなか入らない距離なので、ラッキーでした」と笑うが、結果的に、このパッティングが入っていなければプレーオフに進むこともできなかったことになる。

 優勝がなかったとはいえ、2位は今季実に7度。海外でも、6月の全米女子プロゴルフ選手権で2位。日本代表として出場したパリ五輪も、メダルまであと一歩の4位だった。「思い通りのショットが打てない」ともどかしい思いを抱き続けている。はた目には決して悪くないショットにも、「当たった時の音がいまひとつ」などと首をかしげる。優勝したこの日さえ、「ショットは思うように打てませんでした。パッティングに助けられました」と満足していない。最初に年間女王の座に就いた一昨年のスイングのイメージを、追い続けている。

 悩みながらも、日々のルーティンは丁寧にこなしている。この日もスタート前には、ドライビングレンジで弾道計測器で様々な数値を測り、父・勝臣さんのアドバイスを受けながら打ち込む姿があった。勝臣さんは「特に重視している数値は、キャリーとスピン量です。スピン量は、多くても少なくてもいけない。クラブごとに、美夢有にとって最適の数値に調整するようにしています」と説明する。

 今季メルセデス・ランキングでは、まだ1勝にも関わらず、7勝を挙げている竹田麗央に541.40ポイント差の2位につけた。「竹田さんは本当に素晴らしい選手です。プレースタイルは違いますが、これからも私らしいプレーをして、少しでも上位で戦えるように、精一杯やっていきたいです」と決意を新たにした。残り6試合。3年連続女王を諦めはしない。

(宮脇 広久)

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