2024.11.9
不惑の境地で64 全美貞-円熟の17番
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
第40回伊藤園レディスゴルフトーナメント グレートアイランド倶楽部(千葉県)第2日
64とこの日のベストスコアをマークし、首位に浮上した全美貞が晴れやかな表情を浮かべた。そして、「今シーズン、一番いいことがあった日ですね」とほほ笑む。
8バーディー、ノーボギーのラウンドは完ぺきである。序盤から、ショットメーカーの真骨頂の連続。前半だけで5バーディーを上積みして、上位争いを続けた。「ショットの精度は今年、ずっと良かった。ところが、パッティングがさっぱり…。どうしたら、良くなるかを日々、考案してさまざまなことに取り組んだけど、まったく結果が出ない」。いうなれば、負のスパイラルに迷い込んだ。
ところが-。11月1日は自身42歳の誕生日だった。心機一転するには絶好の時を迎えたといえるだろう。加えて、前週はオープンウィーク。ある、一大決意をしたのだ。「クラブを握らない。何もしないでのんびり過ごそう。好きなものをいただいて…」。ゴルフ漬けの毎日にピリオドを打った。
「体が軽くなった。もう、重い荷物をおろしてもいい」と達観したのだ。続けて、「うまくいかないから、どうしても練習する。だけど、うまくはいかず、翌日のプレーで疲労を感じて、悪影響を及ぼす。だから、大幅に練習量を減らした。5分の1ぐらいに…。年齢的なものとは思いたくはなかったけど、これからはうまく折り合いをつけていこうと決心したのですよ」と苦笑しながら、本心を語った。
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
一方で、心も整える。「何も考えない。今、メルセデスランキングは49位だけど、特にシード権にはこだわるつもりはありません。私ができることだけをやる。以前は、永久シード獲得が頭から離れなかった。でも、脳から追い出した。おかげですっきり」。これが不惑の境地というものだ。
ただし、12年には賞金女王のタイトルを獲得し、これまで通算25勝と積み上げた経験は何ものにも代えがたい財産となっている。「きょう、ベストショットといえば、パー3・17番の第2打かなぁ。グリーン右奥のラフに第1打をはずした。距離が22ヤードぐらいあり、とても難しい状況だったけど、ピン80センチに寄せて、パーセーブ。14番、11メートルのバーディーが決まった時もうれしかったけど、17番は格別でした。無欲で自然体のショットができたからです」と、明かしている。
それだけに、「そういうことがあるから、どんなに苦しいことばかりでも、ゴルフがやめられないわけですよ」。実感がこもった、いい締めくくりだった。
(青木 政司)
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