2021.5.2
ダブル桃子のPO決戦 上田が2年ぶりの逆転V
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
JLPGA ツアー2020-21シーズン第23戦『パナソニックオープンレディースゴルフトーナメント』(賞金総額8,000万円、優勝賞金1,440万円)大会最終日が5月2日、千葉県市原市・浜野ゴルフクラブ(6,638ヤード/パー72)で行われ、上田桃子が約2年ぶりの逆転優勝を飾った。ツアー通算16勝目。強風が吹き荒れ、優勝争いは大混戦になった。勝負は通算5アンダーで並んだ大里桃子とのプレーオフへ。2ホール目で上田が桃子対決を制した。
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史上初の桃子対決。それもプレーオフだ。上田桃子は、「絶対、ネタにされる。負けはイヤだなぁ」と思ったそうだ。通常、POは18番で行われることが多い。しかし、今大会はパー3の9番。4番目に難しいホール。ところが、ラッキーアイテムがあった。強風対策として6Uに代わり、5Iを加えた最終日のクラブセッティングが功を奏す。
「きょうだけで9番を3回。すべて5Iです。いいボールが打てた。私は新しいクラブを入れると勝つことが多い」。思い出したように、ポツリとつぶやく。そのPO2ホール目、15メートルにグリーンオン。1メートルに寄せ、パーセーブで大接戦を制した。「バーディーがひとつもない。それでも勝てた。去年の全英女子オープンの経験が大きい」といい、「風は好きです。集中力が増すから。1日、ずっとガマンを続けてきた。最後には必ずいいことがある」。
この日、コースには最大瞬間風速20.2m/sという南西からの強風が吹き荒れていた。序盤から、各選手が自然の驚異に四苦八苦する。優勝争いも上位が目まぐるしく動く。まったく予想がつかない展開となった。
そんな状況で、上田は淡々とプレー。パーセーブを重ねて、ひたすらチャンスを待ち続けた。とはいえ、終盤の15番で2メートルのパーセーブに失敗。ボギーを叩く。ただし、最後まで集中力が途切れることはなかった。ベテランとなった円熟味。アグレッシブなスタイルばかりがクローズアップされてきたが、新たに発見した自身の将来が見えてくる。
2021年3月。統一されたシーズンが再開した。ところが、開幕戦から世代交代をアピールするように小祝さくら、稲見萌寧など、新世代の若手ばかりが台頭。知らず知らずの間に、結果が出ない焦りが出てきた。
「コロナ禍でたくさんのギャラリーの目前でプレーすることが少なくなった。たとえば、バーディーをとると、皆さんの歓声でよしっ、次も-そういう勝負の流れができる。そういうことがなくなった」と、タメ息をつき、今年のこれまでの苦悩を吐露する。「目標が定まらない。今まで、ギャラリーの皆さんにコースへ来て良かったと思ってくださるようなプレーをすることが、大きな目標でしたからね。確かに、今年は若手からたくさんの刺激を与えられてきた。でも、目標が浮かんでこない。私も若い時はたくさんの先輩の姿を拝見しながら、猪突猛進で1番になる、という気持ちだけで進んできたけど…」という。
迷いはプレーにも影響を与えた。ヤマハレディースの最終日の最終ホール。得意のバンカーショットにもかからず、「ホームランです。凡ミスで、トップ10を逃した」という。さらに、故郷の熊本でのKKT杯バンテリンレディスでも思い通りのプレーができない。苦悩はピークに達する。
前週は当初から欠場のスケジュールで、調整に充てていた。辻村明志コーチと、茨城・大洗でミニ合宿を行う。「大洗でプレーすることは初めて。戦略性のあるコースで久々にワクワクした。同時にコーチとも話して、ベテランの強みは何だろうかと考え抜いて、基礎をしっかりできる選手になるという生涯の目標まで固まったと思います」。
今大会、清々しい姿でリ・スタートを切ったのだ。そして、早くも優勝。タフな1日でさらに存在感が増してきた。「こういうゴルフもありました。純粋にプレーを楽しむことができましたよ。まさか、こんなに早く結果が出るとは…」と、うれしいサプライズをかみしめる。
次週はワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ。公式競技には不思議と縁がない。45連敗中。匠の技は、基本の延長線上で発揮される。
(メディア管理部・鈴木 孝之)
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