2023.10.18
ある日のイボミ 森口祐子の視線から①
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
NOBUTA GROUP マスターズGCレディース マスターズゴルフ倶楽部(兵庫県)
19日、ラストゲームがはじまる。時を同じくし、生きてきたファンは大いなる仕合わせと、幸せをかみしめる。フィールドに舞い降りてきた天使の13年間を、永久シード保持者、現在は解説者・森口祐子がイボミのJLPGAツアー引退へ寄せて、「私が見た、ボミさん」を振り返る。
《2014年9月13日=日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯第3日》
「最も記憶に残るシーンは私の場合、優勝シーンではありません。途中棄権の日に見た表情が、浮かんできます。テレビ解説の仕事で現地へ滞在。この日もそろそろ、コースから戻る時間だなぁ、と思っていた矢先のことでした。私がいたのは美奈木ゴルフ倶楽部のパー3・12番付近だったと記憶している。そこから、遠目にボミさんのプレーを見ていたら、11番のグリーン上でパッティングをする前に突然、コースから離れようとしていた。けがをしたのだろうか・・・。すごく気になってクラブハウスへ戻りました」。
第2日まで6位タイの成績で前年に続き、大会連覇を狙っていた。ところが、韓国で闘病中のお父さんの容体が急変。「一身上の都合」で途中棄権を申し入れたことが理由である。プロデビューした韓国ツアーでも一度も棄権したことはなかったという。前週、一時帰国し、お父さんを見舞って決戦へ臨む覚悟を固める。それでも、開幕前の公式会見では目に涙を浮かべながら、気丈に語る姿はプロフェッショナルの矜持と、大事な家族を思いやる複雑な感情を、はじめてのぞかせた場面だったかもしれない。
「ご病気のお父さまのことを、存じ上げていなかった。ただ、クラブハウスへ戻ると、関係者の方からそのお話をうかがって・・・。玄関先から車へ乗りこむと、ボミさんは一点をずっと見ていた。表情がものすごく切ない。来日してから、いろいろなさみしさを乗り越えながらいたのかなぁ、と考えながら見送りました。一度も見せたことがない表情でしたからね。忘れられません。あの日のことは」。
2010年の最終予選会を経て、翌11年からJLPGAツアーへ本格参戦を果たす。韓国ツアー賞金女王のタイトルを引っさげて。
「2010年ぐらいだったかなぁ。韓国から多くの選手が日本を目指して、JLPGAツアーでプレーするようになったのは。その中で、ボミさんは異色でした。素直でキュート。ふたつを併せ持つ人って、多くはいません。どこにあの人の本当の姿があるのだろう。私は、そう感じて、プレー以上に内面の興味まで抱かせた存在です。彼女を探ってみたくなりますよ。それは-」と前置きし、「どういう言葉が適切かは、うまくは言い表せないけど、いつも、かわいい女性です。同性の私がみても、かわいいという言葉しか見つからないもの」。
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
一方で、「ゴルフは個人のゲームです。勝者は一人。どこかに闘争心を秘めていなければ、生き残れない世界です。集中力も保っていかなければなりません。そういう人って、時には人を寄せ付けないオーラというのか、独特の雰囲気があることが当然でしょう。だけど、彼女はものすごく声をかけやすい選手でした。いつも周囲に人があふれて、笑顔をふりまいていた。実際、ご覧になればわかるけど、体形に恵まれているわけではない。隠れて努力を重ねながら、謙虚で前向きな姿勢が不変です。どんなに強くなっても、本質を失うことが皆無でした。人間的な魅力が、どんどんファンを引き寄せる稀有な人だと思います」。
大成する選手は大きく分けると、2つのタイプがあるそうだ。どんなことかといえば、「才能があることはもちろんですけど、追求型と吸収型です。追求型は宮里藍さんでしょう。入り込めないムードをもちながら、毅然としたクールビューティーの典型。そして、吸収型がボミさん。人懐っこさというのか、競技の緊張感の真っただ中でも失うことがなかった。できてしまうんですよ。宮里さんの時も驚いたけど、ボミさんにも、驚かされたことがたくさんあった」。
たったひとりのスーパースターの出現がプロスポーツを変えてしまう。クラブを握ったことがなくても、その人を生で見たいとコースへ足を運ぶ。
(青木 政司)
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