2024.2.28
仕上がり上々 鈴木愛『何か、したい』が目標
第37回ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント 琉球ゴルフ倶楽部(沖縄県)
節目のシーズン。今年5月、鈴木愛は30歳の誕生日を迎える。開幕前日のこの日、ドライビングレンジ、パッティンググリーンで例年にはない、絶好の仕上がりをアピール。キャディーバッグを拝見すると、23年とは違うクラブが4本、目についた。
「ウェッジ(50度、54度、58度)を3本、新調。ようやく、理想のクラブが見つかりました。去年までは17年から同じクラブを7年間、使いましたよ」という。続けて、「最初に使った時、顔がとてもいい。実際に試してみると、距離とスピン量が一致しているのもベスト。トレーディングエッジが開いても、気持ち悪さがない。もう、言い訳はできませんね」と、ピン・s159を大絶賛。パターも開幕戦では新調した。ストロークの軌道が反映されるPLD Kushin Cへ絶大な信頼を寄せている。
準備万端といったところだろう。そして、今季の目標を、「何か、したい」と笑顔で答えた。17、19年の賞金女王はタイトル、優勝などを言葉にしないのはプロ入り後、はじめてだ。脳裏にあるのは、「誰かの役に立ちたい。社会貢献をする。能登半島地震で、その気持ちがさらに強くなった」そうだ。義援金として1000万円を寄付。これまでも毎年、公にすること、しないことを含め、チャリテイー活動に熱心なことはあまり知られていない。
「きっかけは、子どもの頃から通った徳島の練習場。ネットや機械などがとても古く、私がプロになって稼いだら、施設をきれいにして恩返しをしよう、と思いながら頑張ってきました」と前置きし、続けた。
「プロになったばかりは毎週、本当に大変でした。うちは、裕福ではない。賞金を稼がなければ、次の試合へどうやって遠征するか-そんな心配があった。2年目のシーズン。母から、ここで勝たなければ次へは行けない、とラシンク・ニンジニア/RKBレディースの直前に言われた。だから、必死でプレーしたら優勝。ひと息つくことができたわけです。それだけではない。実はJLPGAツアー初優勝の日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯の直前も、同じ状況でした。そうしたら、まさか、まさかの優勝です。不思議な運を感じるとともに、知らない皆さんが応援してくださるから-と痛感。お金は常にカツカツの経験をしたから、試合へは飛行機には乗らず、節約するために母と2人で移動したぐらいです。そんな時があったことを忘れてはいけない。困ったときはお互いさまの精神で毎年、社会貢献をはじめました」。
若い時の苦労は買ってせよ、といわれるが、なるほどその通りだと思う。「強くなることは当然だけど、人のために何かできる選手になることが私の大目標。たとえば、自分だけの目標では全力を出し切るモチベーションにはならない。だけど、誰かのため、と考えれば、頑張れます」と宣言した。
ちなみに、今大会は生涯獲得賞金9億円達成が目前に迫っている。スーパープレーを披露して、勇気と感動を与えることもプロゴルファーの重要な社会貢献。まさに、天職を得た証明である。
(青木 政司)
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