2024.7.24
中山綾香・ティーチング新時代
JLPGA新時代はツアーだけではない。ゴルフの普及拡大へ向け、大きな役割を握るティーチングプロフェッショナル会員も同様だ。ツアーで活躍する選手同様、若年化が際立っている。別掲のように2020年がひとつの転機に。24年、入会会員は平均25.4歳となった。
世界中を襲ったパンデミックは、ライフスタイルを一変させた。しかし個々が、より創意工夫をすることで、新たな可能性を見出す転機ともなる。
中山綾香は2024年1月、JLPGAティーチングプロフェッショナル会員として新たなスタートを切った。インスタグラム、XなどのSNSをフル活用。フリーの指導者として主に神奈川県内で超多忙な日々を送る。
「私の場合、練習場へ所属しているわけではない。SNSのダイレクトメールを頂戴すると、コンタクトをとってスタートします。お相手と面接ではないけど、まずお会いしていろいろな話をうかがう。物事は最初が肝心です。その上で、ゴルフ上達のお手伝いをしたいと思っている。たとえば、10人のアマチュアゴルファーがいれば性別、体形など、すべての人が違う。第一、ゴルフには正解がなく、ゴールがない生涯スポーツです。だからこそ、プレーを心から楽しんでほしい。お客さまに合った指導を全力で行っています」と笑顔を浮かべた。
その上で、「これまでの経験から、ただ指導するのではなく、トラックマンやGCクワッドなど、最新機器を活用しています。弾道、スイングなどを分析し、わかりやすく生徒さんにお伝えする。そこから自身を知っていただき、セルフコーチングができるまで、スキルを高めていただくことをテーマにしています。JLPGAティーチングの授業には、トラックマンの授業などもあり、大いに参考になりました」と続けている。
クラブを握ったのは小学5年生。ビギナー体験会へ参加し、楽しさと奥深さを全身で知った。「保護者は会場へ入らない。みんなでわいわいと楽しく、です。いい環境を提供してくださった。それがきっかけで、中学でゴルフ部へ入って、高校2年の時にアメリカへ留学。普通の学生にはなりたくなかったからです」と、異色の経歴を自ら選択した。
セントラルフロリダ州立大学での体験も、大きな活力となっている。「ベストの大学からリクルートされました。ただし、楽ではなかったです。私はもしかして世界一、忙しい大学生-と感じるぐらい。日本流にいうと、文武両道がモットーでした。そこでは勉強が優先される。あくまで大学は勉強の場。ゴルフはしっかりと勉強で、成績を残さなければプレーすることを認めてはもらえません」という。
ひと息ついて、「オーランドは観光地。ヒューマンコミュニケーション、ホスピタリティーなど、興味がわくことを学んだ。加えて、授業で日本人は私ひとりです。他の学生の2倍、3倍の学習が必要でしたね。一方で、勉強したことを発表しなければなりません。プレゼンテーションが多かった。プレゼンでは、さまざまな評価を受ける。そして、己を知るという繰り返しです。指摘されてわかった私のクセなど、ハッとさせられる多かったなぁ。客観視できる基礎が身についたのは、そのおかげです。指導する立場になってから、本当にありがたいと思いました」と、しみじみと語った。
卒業後はツアープロとして、アメリカやヨーロッパを転戦。しかし、コロナ禍を機に新たな人生の転機を見出す。「まだ、長い人生の途中ですけど、ここまでたくさんの時間、お金をゴルフへ費やした。(コロナ禍で)試合がなくなったりしたから、違う方面でゴルフをやってみよう、と視点を切り替えて。それでも、ゴルフからは離れたくはない。今まで、選手としてやってきたから、今度は教える立場もいいかなぁと、思って。試してみると、指導をしている時の私は、熱がすごく入ることもわかってきた。ゴルフが好きなんだなぁ、と客観的に…」。帰国して、JLPGAティーチングプロフェッショナル会員資格を目指す決意を固めた。審査から会員資格を得るまでに、3年間の月日がかかる。「入会審査に合格。資格を得てからライセンスカード、ネームタグが届いてから、指導者になったと明確に感じることができた。それでも、資格を得ただけで満足しては、先へ進めない。蓄積する期間です。せっかくの資格も、自らアクションを起こさなければ有効に活用することができません。振り返ると、資格を得るために費用と、時間がすごくかかっている。他で、働きながら収入を得て、資格講習会などへ通う。全部で400万円ぐらいの費用が必要だった。楽ではありません。生活もしなければいけない。同期の仲間もそうでした。苦労を重ねた共通項がある。入会時、みんなと力を合わせていこうと話し合い、実際に行っています」。
一方で、セントラルフロリダ州立大学で学習したことを生かすことも考えた。ゴルフだけではない。総合旅行業務取扱管理者の国家資格も取得。「大学以上に猛勉強をした。(ゴルファーを)海外へ送り出す立場になった際、資格をもっていれば、そのお手伝いもできますからね」とも加えた。
新時代のティーチングプロは、従来の枠では収まらない。昨年12月の入会式では新入会34人を代表し、誓いの言葉をのべた。「探究する姿勢を常に忘れない」と。この日、長時間にわたって、キャリアを話していただいた。次回は、テクニカル編へ移る。どうぞお楽しみに。
=つづく
(取材・文 中山 亜子)
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