2024.8.3
ティーチング新時代 中山綾香テクニカル編
ティーチング新時代。自身の経験を踏まえ、工夫に工夫を重ねた、中山綾香・テクニカル編をお届けする。
ゴルフもファッション同様、足元で決まる。プレーで最も大切なことを質問すると、「アドレスです」と即答だった。「アドレスを見ると、どんなボールを打つか、どういった傾向かを予測できます」という。基本中の基本がここにある。
ということで、準備を大切にする。「アドレスを変えただけで、スイングのプレーン、軌道に加えて、入射角など、いろいろと変わってきます。アドレスがいいポジションか、心地よいポジションにあるかが、私が考える打つ前の準備です」と説明した。
では、各自にあったベストアドレスをどう見極めるのだろう。「前傾姿勢をしっかりとっている。角度がきれいにとれていることが重要です。というと、ひざが曲がってしまう方が本当に多い。曲げるのではなく、腰というより股関節から折れているかです。そうすると、しっかりした準備ができていると感じる。アドレスの前にストレッチをしてみるといいでしょう。でも、スコアへ直結するわけではありません。安定性、クラブが振りやすくなって、けが防止へつながっていく。デスク仕事が多い方は特に。しかもコースへ到着するまで、車を運転するから1-2時間は同じ姿勢を続ける。筋肉が硬直して、前傾姿勢がとりにくくなる要因のひとつです」と解説した。
一方、スイング軸も基本を構築する重要なファクターだ。「要は体の中心に沿って回転をすればいい。きわめてシンプルです。ところが、前傾姿勢をとると、脳へクエスチョンマークがいくつか浮かんでくる人が多い。動きが複雑になってしまう。直立している時は回転方向がわかっても、前傾ではできない。私の場合は、クラブを握らずに一連の動作、鏡を使用して確認するなど、徹底的に背骨中心の感覚引き出すように指導します。日々、100パーセントを出し切るのは至難の業ですけど、土台がしっかりしていれば、おかしいなぁ-と疑問が浮かんだ時に対処ができるでしょう」の言葉には説得力があった。
同時に、大切なことは「大きい筋肉を使うことです。小さな筋肉も大切ですけど、崩れやすくもなる。土台は大きな筋肉を整えることです。あくまでもシンプルにいきましょう。その時に、例えば手の位置などの細かいことを指摘されると、迷いの原因になる」と加えた。
インタビュー中、理路整然と自身の言葉で話し、時間が過ぎていく。これが聞き手によって気持ちが良い。しかも一方的ではなく、Q&Aの間が絶妙だった。
「生徒さんへ寄り添うこと。スイング、理論は私ではなくても指導できることでしょう。自己紹介を行い、悩みや、キャリアなどをうかがう。スイングも拝見しながら、話を深めていく。コミュニケーションをとりながら、生徒さんのお話を丁寧にうかがいながら、感覚を丁寧にさぐります。いかにシンプルにできるか。余分なことをそぎ落としていく。プレーは体がベース。型にはめるのではなく、体形、骨格にあったスイングをつくっていきます」を信念にしている。
さらには、「私は分析が得意。最新機器を使用し、データを収集しながらこちらの考えを押し付けるのではなく、一緒に-です。究極はお客さまがセルフコーチングできるようになってほしい。もし、少し時間があいてしまう場合などは、チェックポイント、ドリルなどをこまめにSNSで伝えます。ゴルフは個人スポーツ。だけど、気持ちは一緒にいます。ご縁があってお会いしたわけですから、上手になってほしいから」と話した。
現在はジュニアの指導も行う。基本は変わらないものの、アプローチの仕方が難しいそうだ。「小学1年の女子、小学4年の男子を指導中です。楽しいけど、難しい。大人とは対照的に、形を言葉で伝えてもわからないことが多い。だから、それぞれのニーズに合わせ、その場で手を貸す。吸収がはやいから、責任重大。こちらからかける言葉ひとつでも、おろそかにはできない。視野を広げてほしいから、私のいい経験を十分に生かせると思います」という。
続けて、「大学時代のコーチとは今も、ひんぱんに連絡をとっている。私にとっての恩人であり、人生の師。永遠のコーチです。ひとりひとりの人格を第一に考え、大事にしていただいた。ゴルフはプレーする人があってのもの、ということが持論で、ゴルフだけがすべてではない。もし、プレーがうまくいかなくても、あなたが悪いわけではない。たまたま、そういう日もある。これが人生最後ではないから-と何度も励まされてきた。たとえば、試合が終わると、一度もスコアを質問されたことがなかった。きょうは楽しかったの。どんな一日でした、そんな感じです。ジュニアはすごく繊細。日本では多くの場合、きょうのスコアがどうだったから話がスタートする。そういう場面に遭遇すると、ちょっと圧倒されるというか、うーんと感じる。コーチしだいで、良い方向、悪い方向へいってしまうからです。責任重大だけど、やりがいはありますね」。
プレー同様、指導へも完成形をつくらない。人と人との結びつきを第一に。長いお付き合いを、こちらからお願いしたくなる方でした。
(取材・文 中山 亜子)
中山綾香プロフィール
神奈川県出身、1994年1月25日生まれ
2024年1月1日入会
中山綾香オフィシャルウェブサイト https://ayaka-nakayama.com
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