<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
2025シーズンがまもなく開幕する。最終プロテストの難関を突破した97期生が希望を胸にデビューを待つ。2024年の総受験者は695人、合格率はおよそ3.7パーセントだった。今年、羽ばたく26人を紹介する。
幼少期からクラブを握って育ったツアープロは比較的多い。小俣柚葉もその一人だが、他の選手とはゴルフを始めたときの環境が異なる。というのも、実家が東京都杉並区にある「西荻ゴルフセンター」というゴルフ練習場なのだ。「物心がつくころにはもうクラブを振っていました」。プロゴルファーだった祖父が開いた練習場に、ティーチングプロの父親、米女子ツアーにも参戦した経験がある叔母とくれば、ゴルフは日常生活に溶け込んだ馴染み深いものでしかない。ある意味、ゴルフを始めたのは必然だったといえる。
その小俣が本格的にツアープロを目指したのは中学生になってからだった。「大会とか出ているうちにもっと上位にいきたいなと思い始めたのがきっかけです」。競技ゴルフの面白さを知り、その頂点がプロのトーナメントである以上、ツアープロになりたいと思うのは自然な流れだろう。もちろん、そう簡単にプロになれないことは十分理解している。今まで以上にゴルフに集中することを考え、高校は都内にあり、通信制でゴルフ部を有する代々木高に決めた。
通信制なら練習時間をより多く確保できるし、自分の好きなタイムスケジュールを組みやすい。しかも、自宅には60ヤードを打てる打席とバンカー、アプローチ練習場、パッティンググリーンがある。そして何よりも父であり、コーチでもある裕次朗氏がいるのだ。「確かに練習する環境はよかったと思います」。さらに、ラウンド練習として泊りがけで近県のゴルフ場へ行き、実戦感覚をつかんだ。その成果として、高校時代は栃木県女子オープン、東京都ジュニアを制し、全日本女子アマゴルファーズ選手権2位、日本ジュニア4位などの実績を残した。
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ところが、初めてプロテストを受験した23年は春先から調子が悪く、第1次予選でその先を阻まれた。同じ失敗を繰り返さないためにも、一度スイングを見直そうと考え、ツアープロコーチでもある坂詰和久氏にスイングチェックを依頼する。「ちょっと手打ちになっていたので、体をしっかり使ったスイングをしようということになりました」。テークバックの際に手でクラブを上げていた動きを体幹で行うわけだが、今までのスイングとは感覚が大きく異なったという。ただ、小俣の場合、幼少の頃から裕次朗氏とスイングの微調整を行っていたこともあり、スイング改造への抵抗がなかったのは幸いだった。
スイングを変えたことで、ショットの方向性が安定。昨年のプロテストでは通算1オーバーの14位タイで合格した。ただ、QTランキングが154位なので、今季はステップ・アップ・ツアーがメインとなる。明治安田ステップ・ランキング2位以内に入れば来年の前半戦出場権を得るが、まずは1勝できるようにベストを尽くす。そのためにもシーズンオフはスイングの完成度を少しでも上げてショットの安定感を増すこと、アプローチ、パッティングのショートゲームを磨くことが課題となる。
「ドライバーの飛距離も伸ばしたいので、トレーニングもしなければいけませんし、やること一杯で忙しいです」。96、97期には同学年が13人もいるという。その存在が励みにもなるし、負けたくない気持ちをさらに燃え上がらせる。将来は叔母である奈三香さんのように、米女子ツアーで戦いたい夢もある。ゴルフ一家に生まれた小俣がどのような成長曲線を見せるのか、要注目だ。