2025.5.10
藤田さいきが完全優勝&公式競技2冠へ王手
2025.4.20
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
JLPGAツアー2025シーズン第6戦『KKT杯バンテリンレディスオープン』(賞金総額1億円、優勝賞金1,800万円)大会最終日が4月20日、熊本県菊陽町・熊本空港カントリークラブ(6,565ヤード/パー72)で行われ、佐久間朱莉が初優勝を飾った。この日は1打差を追いかけ、2位タイからスタート。5バーディー、ノーボギーの67と堂々の内容で、通算11アンダーの圧勝だった。今大会のトピックスは21年、山下美夢有から5年連続でツアー初優勝者が栄冠を奪取。88年のツアー制度施行後のレコードで、さながらスター選手への登竜門といえるだろう。2打差の通算9アンダー、2位に地元・熊本県出身の大里桃子が入った。
今大会はツアー屈指の難コースである。相手に不足はなし。ただし、それほど調子が良かったわけではない。「ショットの精度などを比較すると、前週のほうがはるかに調子は良かったと思います。だから、今できる最高のプレーをしよう、と集中できた。そして、気持ちを楽にして、勝敗はあまり考えていなかったかもしれない」と振り返った。
平常心を保てたことが大きい。序盤からチャンスを逃さず、バーディーを積み重ねる。前半最後の9番。残り62ヤードの第3打を58度で3メートルにつけ、楽々とバーディー奪取に成功する。「ひたすら、バーディーを目指してプレー。前半の最後でふたけたアンダーの目標に達することができた。最近の今大会では、ふたけたの優勝スコアが出ていないとうかがっていたからです」と、理由を簡潔に説明した。首位に立った4バーディー、ノーボギーのラウンドは抜群の内容だったが、バック9が残っている。
ましてや、数多くの優勝争いを重ね、プロテスト合格の5年間では無念の涙を流し続けた。中国古代の思想家・老子の言葉が脳裏に浮かぶ。災いは福のもたれかかるところとなり、福は災いの潜むところになる。誰ひとりとしてその大本はわからない、と人生を語っている。ただし、災いを福に変えてしまう勝負どころの強さが、この日の佐久間には見え隠れした。
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
13、14番ではそれぞれ5メートルのパーセーブに挑戦。楽々とカップインさせている。パー3の16番は7Iでピン4メートルへ。後半、唯一のバーディーチャンスを逃さなかった。続いて、自身がハイライトにあげた17番で優勝を確信する。このホールは、大ピンチだった。
「残り136ヤードの第2打を9Iで、右手前のバンカーに…。第3打はピンまで13ヤードです。58度のショットは5メートルのオーバーでした」という。第4打のシーンではより慎重になった。フェースの向き、アドレスを再確認。狙いすましたように、ボールはカップに吸い込まれた。パーセーブである。「あのパッティングが決まって、はじめて優勝を確信した」と加えた。
第1日29パット→第2日27パット→最終日24パットのスタッツについて、「いいリズムが途切れることがなかった。パッティングを技術面でいうと、タッチが合う。ボールがカップに届く。この2つが去年と変わったところだと感じる」。
ちなみに、佐久間が25年シーズンに選択したのは、ピンのスコッツデールDS72だ。ヘッドはミッドマレットタイプで、インサートが柔らかい。それでもボールの直進力があり、しっかり転がることが特性。経験は用具を選ぶ目も養い、勝利のギアを手中にした。
「ひとつ勝てば、2つ勝ちたくなります。もっとJLPGAツアーで精進して、強くなりたい。それが今、私がやることです。もちろん、勝利にこだわって」と足元を固めることを宣言。常に身の丈を忘れないのは、志が高いからである。