2022.5.22
西郷真央V-4時間26分の苦悩と起死回生のドラマ
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
JLPGAツアー2022シーズン第12戦『ブリヂストンレディスオープン』(賞金総額1億円、優勝賞金1800万円)大会最終日が5月22日、千葉県千葉市・袖ヶ浦カンツリークラブ袖ヶ浦コース(6713ヤード/パー72)で行われ、西郷真央が16番の劇的イーグルで優勝。通算13アンダーで今季5勝目を飾った。年間出場10試合目で5勝は、04年の不動裕理を上回る1位のスピード記録。2位は通算11アンダーの稲見萌寧が入った。
(天候:晴れ 気温:21.2℃ 風速:2.8m/s)
《グリーン=スティンプ:12フィート コンパクション:24mm》
コロナ禍を吹き飛ばすような興奮、どよめきが起こった。これがトーナメントのダイゴ味である。西郷真央が放ったパー5の16番・第3打は、まさにアートのようなイーグルだった。左バンカーからピンまで25ヤード。ピンチではない。チャンスだった。
「近すぎず、遠すぎず…。好きな距離です。しかも、バンカーがとてもきれいなライでした。カップまで、ストレートの傾斜だし、いいラインだなぁと感じましたね。スーッと構えて、スーッと打てた」という。シナリオでも存在していたかのように、きれいな弧を描きながらボールはグリーンへ落下。測ったようにカップインした。
こういうショットが入場料を払っても、おつりがくる-というのだろう。一気に形勢逆転。優勝を引き寄せた。しかも、このホールにはイーグル賞、100万円がかかっていたのだ。「ダブルでラッキーです」と知ったのは、表彰式の後。
劇的なドラマを演出したのは、苦悩の時間が長かった証でもある。16番のスーパーショットまで、4時間26分が経過。「きょうは、本当につらかった。前半から、ずっと苦しい時間ばかり。くじけそうでした。でも、地元の千葉の皆さんがたくさん、応援してくださったので、ピンチのたびに奮い立つことができたと思います」と感謝した。
最終日、優勝争いは目まぐるしく変化する。単独首位でスタートし、追いつかれ、さらにトップを明け渡した。その後、再び首位へ並びかけ、突き放したのである。今季の4勝も印象的なシーンが多い。とはいえ、この日ほどドラマチックではなかった。
一方、見る立場なら、イーグルばかりへ目が向くものの、自身が分析したキーホールは11番。「どうしても、バーディーをとりたいパー4。第2打でバックスピンがかかって、バンカーへつかまった。もう、くじけそうに。でも、気を取り直して仕切り直しです。第3打はピンへ寄らなかったけど、次は7メートルのパーパットが入った。流れを切らさず、引き戻すことができたと思う」と説明し、「14番も第2打、パーパットといい、よく耐えることができました」と振り返る。
直近、2週連続の予選落ちが信じられないぐらい、鮮やかな復活を遂げた。順風満帆のような今季の勢い。天国から地獄へ突き落されたかのようだ。しかし、失敗には原因があることを知っていた。
「私は、中学生の頃からスイング動画を撮りためて、その時の心情や、どんなことを気にしていたのかを同時に、スマートフォンへメモで残している。予選落ちした時は、そうした動画を見て、メモを確かめましたね」と明かす。その上で、ジャンボ尾崎から指導を受けたそうだ。「スイングについてのご指摘は宝物。もし、ギリギリで予選を通過していたら、おそらくきょうの優勝はなかったと思う。ジャンボさんから、実際に教えていただく時間はなかったろうし、これからは私の力で修正できるように頑張っていきます」と、改めて誓っている。
以前から、冷静沈着でなかなか自身の内面を明かすことがなかった。それが、スイングの不安を一掃するため、自己の内と外を一致させるプロセスなどを公開。余談だが、グリップへ話題が移ると、「私は左利き。右手は添えているだけ」など、意外なエピソードまで語っている。優勝会見はより、濃厚に。
準備は整った。次なるターゲットは米国遠征。全米女子オープンへ初出場を果たす。「出場できることは光栄です。ただ、学びに行くだけではもったいない。結果を残したいです」と、力強いひとことで締めくくった。
同組で優勝争いを演じ、間近で16番のスーパーショットを見ていた有村智恵が、こんな感想を漏らしている。「ピンへガチャンと当たって入ったなどではない、ジャストタッチの完ぺきなショット。パナソニックオープンの最終日でもイーグルを決めたけど、それも含めて、彼女の技術がそれだけの結果を起こす、技術をもっているということかもしれませんね」
偶然ではない。必然へ変わるまでのプロセス。大一番でお披露目するあたり、おそるべしテクニシャンである。
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