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2023.5.14

岩井千怜が勝利を引き寄せた咄嗟の直ドラ「姉を見て、それもありだなと」

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 JLPGAツアー2023シーズン第11戦『RKB×三井松島レディス』(賞金総額1億2000万円、優勝賞金2160万円)最終日が5月14日、福岡県福岡市・福岡カンツリー倶楽部 和白コース(6299ヤード/パー72)で行われ、首位に4打差、7位タイから出た岩井千怜が逆転優勝。今季初、JLPGAツアー通算3勝目をあげた。勝負は通算11アンダーで並んだ山下美夢有、姉・明愛とのプレーオフへ。PO2ホール目、バーディー奪取で大激戦を制した。
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《グリーン=スティンプ:11フィート コンパクション:23.5mm》

 姉のアイデアを借りて打ったショットが、勝負を分けた。18番、パー5を繰り返し使って行われたプレーオフの2ホール目。岩井千怜と姉の明愛のティーショットは、仲良く並ぶようにしてフェアウェイ右サイドに止まった。そして第2打。先に打った姉が、直にドライバーを振るいグリーン手前まで運んだのを見て、「最初はスプーンで打とうかと思っていた」と言う千怜も考えを変えた。

 「明愛を見て、そうか、ドライバーもありだなと気付きました。ここまできたらファンの皆さんを楽しませたいと思いました」。千怜が姉に続いてドライバーを握ると、周囲のギャラリーがどよめき、歓声を上げた。

 ただし、普段から攻撃的なゴルフを持ち味とし、これまでにも試合で何度か、ティーアップせずにドライバーを振るう「直ドラ」でショットしたことがある姉とは違う。千怜は「試合では初めて。練習でもあまり打っていませんでした。昔から、明愛がやっているのはよく見ていましたが、私はスプーンで十分だと思っていました」と明かす。

 それでも「悪くてもフェアウェイには止まってくれる。失敗する予感はありませんでした」と自信を持って放ったショットは、なんと姉よりもグリーンに近く、ピンから2.5ヤードの位置まで飛んで行った。そこから58度のウエッジでピン手前1.5メートルにつけ、ウイニングパットにつなげた。姉の明愛と昨季年間女王の山下美夢有を相手に、1人バーディーを決めて振り切ったのだった

 前日の第2日にはJLPGAツアー史上初めて、双子と姉妹による最終組対決を実現させたが、姉が71をマークし首位タイで最終日を迎えたのに引き換え、75を叩いて4打差7位タイからの発進となった。

 だが、最終組の姉より3組前でスタートした千怜は、いきなり輝きを放つ。1番から3連続バーディー。1ホール置いて5番パー4でも、バンカーからの第2打をピンそば1.5メートルにピタリと寄せてバーディーを奪い、ぐんぐん首位に迫った。そして山下、姉と首位に並んだ状況で迎えた17番。約10メートルのスライスラインを読み切り、バーディーパットをねじ込んで単独首位に立ち、右拳をぐっと握った。結果的にプレーオフに駒を進め上で、不可欠のバーディーだった。

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 プレーオフ前の正規の18ホールでは、7バーディー・ノーボギーで、出場選手中ベストの65。千怜は「よく耐えたと思います」と自分を称え、「プレーオフではもう、ここまで来たら楽しまなきゃと思っただけです。たくさんのギャラリーの方々に囲まれて、夢だった明愛とのプレーオフを戦えて、本当に現実なのかと思いながら、状況を楽しんでいる自分がいました」と笑う。勝利をモノにした後も「全てが信じられません。第2日に明愛と回り、プラス、プレーオフも。こんなにすごいことが起きていいのでしょうか。勝てたことも、いまだに信じられません」と、記者会見でもまだ夢見心地だった。

 そんな精神状態のせいか、母の日だったことに気付いたのは、優勝が決まった後。それでも、元看護師で姉妹の成長をアシストし、この日も父の雄士さんと一緒にコースで見守ってくれた母・恵美子さんへの感謝は尽きない。「母がいてくれるとリラックスできます。実は、母の日に何かを買ってプレゼントしたことがありません。今日が初めて。最高のプレゼントになりました」といたずらっぽく笑った。

 昨年は8月のNEC軽井沢72ゴルフトーナメントで初優勝を飾り、翌週のCAT Ladiesも制して2週連続V。今季に入ると、4月のKKT杯バンテリンレディスオープンで初優勝した姉に、メルセデス・ランキングで遅れを取っていたが、この優勝で逆転した。千怜が5位、姉も6位で拮抗している。掛け替えのない肉親であり、ライバルでもある最強ツインズの戦いは、まだ始まったばかりだ。

(JLPGAオフィシャルライター・宮脇 廣久)

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