2023.8.13
苦節5年、菅沼菜々が悲願のツアー初優勝達成
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
JLPGAツアー2023シーズン第23戦『NEC軽井沢72ゴルフトーナメント』(賞金総額1億円/優勝賞金1,800万円)大会最終日が8月13日、長野県軽井沢町・軽井沢72ゴルフ北コース(6,702ヤード/パー72)で行われ、単独首位でスタートした菅沼菜々が神谷そらとのプレーオフを制し、通算16アンダーでJLPGAツアー初優勝を飾った。通算13アンダー、3位にペソンウが入った。
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最終日を69で回った菅沼菜々と66で回った神谷そらが通算16アンダーでホールアウト。勝負はプレーオフへと持ち込まれた。最終日もバーディー合戦が予想されただけに、「3打差のリードはないも同然」と前日に語っていた菅沼だったが、結果的にその3打差があったからこそプレーオフに残ることができたわけだ。たかが3打差かもしれないが、されど3打差だったと言える。
18番で行われたプレーオフ2ホール目。菅沼は正規のラウンドではティーショットを右に曲げ、プレーオフ1ホール目では左に曲げていたが、ようやく『三度目の正直』でフェアウェイをとらえる。第2打はピンまで残り127ヤード、軽い爪先上がりのライだ。ピッチングウェッジを選択して振り抜くと、ボールはピン左上1.5メートルに止まる。神谷がすでにパーでホールアウトしていただけに、そのバーディーパットが決まれば、ついに念願のJLPGAツアー初優勝を飾ることができる。
これまで何度も優勝争いに絡みながら、どうしてもあと一歩届かなかった。「このままずっと優勝できずにゴルフ人生が終わるのだろうか」。高校時代に日本ジュニアゴルフ選手権のタイトルを獲得しながらも、プロではそのゴルフが通用しない。コーチである父親の真一さんと二人三脚で5年間頑張ってきたが、どちらの心も折れそうになったのは一度や二度ではない。特に、菅沼の場合、「広場恐怖症」を抱えていただけに、北海道や沖縄県で開催される試合に出られないというハンデがある。試合数が少ない分、優勝するチャンスも減り、勝てないことに少なからず焦りを感じていた。
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
それでも勝つために何が足りないのかという研究は怠らなかった。その一つが、1本のクラブで20ヤードの距離幅を作ることだ。「全クラブでやっていましたが、例えばピッチングウェッジでのキャリーは125ヤードなんですが、それを105-125ヤードまで打ち分けるようにしました」。メルセデス・ランキングの上位にくる選手と回った際、彼女たちがスイングの大きさを変えて距離をコントロールする姿を見たのがきっかけだった。
「ピッタリの距離だけしか打てないとバーディーチャンスが少なくなりますし、それでは上位に行けませんからね」。もちろん、そう簡単に身につく技術ではない。シーズンオフはもちろん、試合を欠場したときは徹底してその練習を繰り返してようやく形になりつつあった。
プレーオフ2ホール目、菅沼の第2打はまさにそのスイングの大きさを抑えたショットだった。ウイニングパットとなる1.5メートルのパッティングにはいろんな思いが込められていたのだ。そんな貴重なパッティングを菅沼が外すわけもなく、しっかりと捻じ込んで勝利を手にした。
「時間がかかりましたが、優勝することができて本当に嬉しいです」。その短い言葉にこそ、菅沼が苦しんできた5年間の思いが込められている。今回の優勝でメルセデス・ランキングも13位に浮上。やはり1勝したぐらいでは満足できないはず。菅沼の戦いはようやく火ぶたを切ったばかりだ。
(JLPGAオフィシャルライター・山西 英希)
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
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