2024.6.2
人生初のうれし泣き 新垣比菜『不思議な1週間』
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
JLPGAツアー2024シーズン第14戦『ヨネックスレディスゴルフトーナメント2024』(賞金総額9,000万円、優勝賞金1,620万円)大会最終日が6月2日、新潟県長岡市・ヨネックスカントリークラブ(6,339ヤード/パー72)で行われ、新垣比菜が通算14アンダーで、6年ぶりのJLPGAツアー通算2勝目をあげた。3打差の11アンダー、2位タイは高橋彩華、蛭田みな美、穴井詩。
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《グリーン=スティンプ:11フィート コンパクション:23.5mm》
不振脱出の出口が突然、見えた。新垣比菜は1メートルのウイニングパットを決めても、表情は変わらない。「不思議な1週間でした」といい、6年ぶりのツアー2勝目を、「初優勝から、すごく年数が経った。だから、初優勝のようです」と話した。
首位で迎えた最終日。「いつも緊張してプレーにならない。きょうは、平常心でいることを心がけた」そうだ。それでも、スタートホールから、なかなか思い通りに体が動かなかった。「第1打から、ショットがいまひとつ。いつものパターンかなぁ」と、負のイメージが脳裏を過る。9Iを選択した、残り127ヤードの第3打も、ピンから7メートルと、グッドショットはいかない。
ところが、好調のパッティングが活力を与えた。「きのうもそうでしたけど通常、カップへ入らない距離が、入るんです」。鮮やかな、おはようバーディーだった。肌寒く、冷たい雨の一日。それでも、淡々とプレーを続ける。前半を3バーディー、2ボギー。勝負のバック9は1バーディー、ノーボギーと安定したプレーで終えた。ホールアウトしてみれば、2位グループへ3打差をつけた完勝。前4シーズン、不振に悩み苦しんでいたことがうそのようだ。
「ダメだなぁと思いながら、苦しかった。でも、本当に苦しかったのはプロ3年目です。シードはとっても、沖縄の自宅へ帰りたいとホームシックに・・・。だけど、試合が続くから替えるわけにはいかない」と前置きし、「結局、ゴルフの知識がなさすぎた。不調になって一生懸命、練習をしても調子を戻す術がわからない。どうしたら上手になれるかは、もちろんわかりません。もう、悩みばかりでした」と、負の連鎖を語った。
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
22年秋から、青木翔コーチへ師事。「アンダーパーが出ない。スコアにならない状況でしたから。スイングを教えてもらい、どうすればいいか少しずつわかってきました。すぐにというわけではないけど、だんだんいいプレーが増え、ショットやアプローチが良くなった」と光明を見出していく。
そんな遠回りも、すべてはこの日のため。これからのためだ。今季、小祝さくら、臼井麗華、天本ハルカが優勝を飾っている。それだけに、今回の復活劇も黄金世代にとって好循環を呼び込むに違いない。
そして、3年前からコンビを組んできた兄、我如古夢蔵(がねこ・むさし)さんの力強い支えも忘れなかった。「優勝が決まって、私は笑っているのに、兄は泣いていた。その姿をみて、涙が出てきた。人生初のうれし泣きです」。何ものにも変えられない、素晴らしいシーンを目に焼き付けたのは、次の勝利へ向けての誓いである。
余談だが、プレーを拝見していると、ボールに視線が行く。JLPGAツアーでは珍しく、全面にオレンジと黒の三角が合体した四角形がプリントされたテーラーメイドのボールを使用する。グリーン上、ボールが躍動してように映った。「2年前から使っています。ボールの転がりがよくわかる。私にすごくあっています。」と大絶賛。これまた、勝利のためのひと工夫だった。
(青木 政司)
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