2022.6.12
Day 4~プラスワン 戸張 捷さん
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
宮里藍 サントリーレディスオープンゴルフトーナメント 六甲国際ゴルフ倶楽部(兵庫県)最終日
日本で、ただひとり、トーナメントプロデューサーを職業に選んだ。きょうも早朝から動く。そして、動いた。コースを360度、ギャラリー、選手などすべての視線で見る。今年で節目の50年-。
「個人が矢面、たとえば私のように責任をもってトーナメントをつくり、運営する人が今も昔もいない。アメリカは必ず、どの試合もプロデューサーがいてさまざまな特性がある大会を行う。でも、日本ではどうだろうなぁ。昔から分担制が多く、この先も…。流れ作業で終わってしまうトーナメントは、ちょっとね。この大会は、私が行ったというカラーを出さないと、将来へつながらない」
主催・サントリーホールディングスのコーポレートカラーは、水色だ。人間の命の源は水。そういえば、「恋は水色」というフランス原曲の素晴らしいメロディーがある。ポール・モーリアがイージーリスニングでカバーし、日本でも70年代、爆発的なヒットになった。ゴルフが好きでたまらない。ゴルフに恋をした当時、青年だった人生の軌跡をあらわすようだ。
「スタートしたのは73年、男子のサントリーオープン。サントリーが海外で大きくマーケティングをしていなかった時代です。日本では知られていても、トーナメントを通し、浸透させ広げていったらいい。それなら、インターナショナルトーナメントを開催すれば-と思い立って、鳥井道夫副会長(当時)へお話したわけです。やってみなはれ、という社の気風もあって、新しいことへどんどんチャレンジ。日本で初めてマンデートーナメントを行って、第2回の習志野からは36ホールのコースから、18ホールをピックアップするコンバインドも始めたなぁ。ジャック・ニクラウス、フィル・ミケルソン、全米オープン優勝後のジェフ・スルーマンなど毎年、旬の選手を招いて、外の空気をたっぷり取り込むことも、インターナショナルコンセプトだった」と、きのうのことのように次から次へとエピソードを語った。
私が忘れられないのは、そのサントリーオープンのプロアマトーナメントへ、人気絶頂のハリウッドスター、ケビン・コスナーが出場したこと。まさにインターナショナルでしかも、エンターティンメントにまで変遷していった。トーナメントの可能性は無限大。
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
軌道へ乗ると今度は女子へ移る。つまり、今大会。「インターナショナルでやりたかったけど、なかなか事情が許してくれない」と前置きし、「プロフェッショナルとはいえ、最初はアマチュアだった。アマがいて、プロがいる。ましてや、ギャラリーとして観戦くださるのはアマチュアでしょう。アマがプロをサポートする大会がコンセプト。アマの中でもジュニアへ目を向け、日本だけではなく、アジアへ目を向けようと提案した。アジア太平洋ゴルフ連盟の代表委員だったから、協力を要請し、費用は各国の協会が協力費を負担してもらって。キム ヒョージュがいた。今年の全米女子オープン優勝のミンジー・リー、去年の全米女子優勝・笹生優花など、それこそ現在、世界のトッププロがプレーしている」
90年、大会がスタートし、今年で33年。ブレることがないコンセプトを軸に毎年、変わり続けた。
「今年はプレーヤーズファーストを考えた。トレーニングルームをつくってね。自由に調整できると評判がいい。六甲国際ゴルフ倶楽部は練習環境が素晴らしいことと、ギャラリーの皆さんが公共の交通機関でいらっしゃる利便性も大会が盛り上がる重要なファクターでしょう」
インタビュー中、何度か「セレンディピティ」という言葉が飛び出した。18世紀、イギリスの小説家、ホレス・ウォルポールの造語だ。偶然の素敵な出会い、予想外の発見などの意味で使用することが多い。
「ラッキーだと思うのは、ゴルフと出会えた。プレーしていた、しているということですよ。その結果が仕事になったのだから。競技で、それほど強いというわけではなかったけど、廣野で開催された日本オープンで第1日から2日間、中村寅吉さんと同組のことがあった。運も左右したでしょう。めぐり合わせ、出会いからさまざまなことが始まる。セレンディピティでしょう。でも、出会いは偶然かもしれないけど、それを生かすかどうかです」とひと息ついて、「お互いの意思が通じるか。とことん胸襟を開き、話し合う。スタイルは古いかもしれないけど、それがコミュニケーション。メール一本でなんて、とても関係が続くわけなどない。偶然は必然だと私は解釈。必然でないと、物事は起こらない」
半世紀のキャリアが語った、ゴルフへ注ぐ、愛の証-。
(メディア管理部・中山 亜子)
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