2022.11.13
山下美夢有 見事なVでタイトル確定
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
JLPGAツアー2022シーズン第36戦『第38回伊藤園レディスゴルフトーナメント』(賞金総額1億円、優勝賞金1,800万円)大会最終日が11月13日、千葉県長南町・グレートアイランド倶楽部(6,741ヤード/パー72)で行われ、山下美夢有が通算12アンダーで優勝。今季4勝目、ツアー通算5勝目を逆転で飾った。また、西郷真央が7位タイで終わり、メルセデス・ランキング1位が確定。1打差の通算11アンダー、2位は岸部桃子、首位スタートの上田桃子は通算10アンダー、3位だった。
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《グリーン=スティンプ:10 3/4フィート コンパクション:24mm》
柔軟性を兼ね備え、この日も山下美夢有は勝利へまい進した。首位に2打差の2位でスタート。最終日は前2日間とは一変した難しいコンディションを、持ち前の忍耐で克服した。最終18番、3メートルのパーセーブが残る。決めれば優勝。もし外れれば、岸部桃子とのプレーオフへ-の状況である。
上りのフックラインをしっかり脳裏に刻み付け、「最後は強く、しっかり打とう」と決断は早かった。ボールは、きれいにカップイン。優勝はもちろん、メルセデス・ポイント2位の西郷真央が7位タイに終わったために、今季から導入された初の年間女王が決定した。
21歳103日のタイトルは、史上最年少。それだけではない。史上5人目のシーズン獲得賞金が2億円を突破。さらに生涯獲得賞金も3億円を超えた。
それにしてもガマン比べの表現がピタリと当てはまるような、忍耐の一日。序盤からパーを重ね、ようやく来た−と思われた8番のチャンスもバーディーパットがカップの縁でくるりと1周し、結局はパーセーブに終わった。終わってみれば唯一のバーディー奪取は15番。持ち前のショットを生かし、1メートルにつけしっかりとスコアを上積みする。
15番で上田桃子を加え、3人が首位に並ぶデッドヒートだったが、結果は1打差を死守。今季、24回目のノーボギーラウンドは値千金だった。スタート前、帯同するコーチの父・勝臣さんと、「風が強い。昨日までとは違う。優勝スコアはおそらく12アンダーぐらい。冒険をせず、ガマン」と作戦を練っている。
加えて、アナリストとしての素養も十分に生かした。今大会、8.5度と9.5度という2本の1Wを持ち込み、コースの状況、自然環境によって、この1本−を選択。「朝、トラックマンでデータを計測。9.5度ではキャリーが出るものの、スピン量が増え、ランで10ヤードの損がある」と決断したそうだ。感覚ではない。詳細なデータ測定と理詰めのクラブセッティングも、勝利を後押しした要因。プロ3年目ながら、キャリアの差を克服する独自のスタイルで新時代を席巻中だ。
ここまでのシーズンを振り返り、「90点」の自己採点。では、昨年とどこが違ったのだろう。「今年、オンとオフをしっかり区別。去年は意味がないとはいえないけど、練習を長時間やって…。スタッツを見ながら、悪いところを分析し、父と取り組んできた」と明かしている。
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
一方で、フルシーズンを戦うためには、技術以上に体力維持がキーポイント。「開幕戦の体重はずっとキープしている。変わったことといえば、後半戦から栄養士さんに(食事メニューを)みてもらっている。私、揚げ物やラーメンが好き。ただ、脂っぽいものを食べると翌日、後半のプレーに影響が出るとアドバイスを受け、節制を心がけている。おかげで体の切れ味が続いています」と説明を加えた。
ただし、最大の原動力はふたつある。「ギャラリーの皆さんの応援と、家族のサポートです」と話した。「今年、プレーをしていて、だんだん皆さんの応援が増えてきたのがわかった。うれしいなぁ。応援されると、強い気持ちで戦える」といい、「また、調子が悪い時もいい時も、家族が変わらずにサポートしてくれた。弟、妹がいても私中心で動いてくれ、迷惑をかけたなぁと思う。心から感謝しています」。それまで、にこやかに語っていたが、ここでは少し言葉がつまり、涙を浮かべるシーンもあった。
今季の残りは2戦。ひとつ気になる記録がある。日本人選手初の年間平均ストローク60台達成だ。もっか70.0504の1位。次週の大王製紙エリエールレディスの4日間で13アンダーをマークすれば、69台へ突入し最終戦への発奮材料がまた増える。ミヤギテレビ杯第1日は60のツアー最少ストローク記録を更新した。記録にも記憶にも残るシーズンへ、もうひと頑張りしてもらおう。
(JLPGAオフィシャルライター・宮脇 廣久)
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
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