2023.5.14
「ショートしたパットはなかった」妹に敗れてもなお岩井明愛が示した矜持
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
RKB×三井松島レディス 福岡カンツリー倶楽部 和白コース(福岡県)最終日
双子に限らず、姉妹によるプレーオフはJLPGAツアー史上初。姉の岩井明愛はその敗者となったが、ある意味で、妹以上の印象を残した。プレーオフ前、先にホールアウトした妹の千怜と山下美夢有が待ち構える正規の18番パー5を、1打ビハインドで迎えた明愛。フェアウェイ右のファーストカットからの第2打を前に、ドライバーを握った。
「うまくいけば(グリーンに)届かなくもない距離だったので、狙ってみようと思って、直ドラしてしまいました」と軽やかに笑う。執念の1打でグリーン手前までボールを運び、アプローチもピンそば2メートルに付けバーディー。プレーオフに割って入ってみせた。
同じ18番で行われたプレーオフの2ホール目でも、フェアウェイからの第2打で再びドライバーでグリーン近くまで運ぶ。しかし、ほぼ同じ位置から明愛に続いて同じドライバーを選択した妹・千怜に、グリーンのさらに近くまで飛ばされた。パッティングの勝負では、バーディーを決めた妹に対し、約2メートルのバーディーパットがカップの左を通過。苦杯を喫した。
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
それにしても、闘志を前面に出した攻めのゴルフには見ごたえがあった。9番では1.5メートルのバーディーパットがカップを半回転して外れ、返しの2メートルのパーパットも外しボギー。10番でも1.5メートルのパットを外して連続ボギー。この時点で千怜、山下美夢有に2打差をつけられ、優勝争いから脱落しかけた。ところが続く11番、12番で、根性の連続バーディー。「入っても外しても、どのパットもショートはしていなかった。そこは良かったと思います」とうなずいた。
「プレーオフは初めてだったので、こんなに楽しいのかと思いました。その中に千怜もいて、不思議な気持ちでした」と振り返る。とは言え、今季2勝目を逃したことはプレーヤーとして悔しくないはずはなく、「もちろん悔しい。8割悔しくて、千怜が優勝して2割うれしいです」と表現した。
3日間にわたる姉妹の激闘をコースで見届けた父の雄士さんは、「ワクワクさせてもらいました。ただ、千怜がウイニングパットを決めた瞬間、まず考えたのは、早く明愛に『よく頑張った』と声を掛けたいということでした。昔から、千怜が勝った時には明愛、明愛が勝った時には千怜に、先に声をかけていたと思います」と複雑な親心をのぞかせた。そして「実際、明愛も最後のバーディーパットは越して(カップをオーバーして)打っていた。ナイスパットと声をかけましたよ。直ドラも面白かった」と敗れた姉を称える。メモリアルな一戦は終わったが、明愛の攻めのゴルフはこれからも変わらない。
(JLPGAオフィシャルライター・宮脇 廣久)
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